※恒例の鍋パーティーin岸谷家
※臨静というかギャグ
※キャラ崩壊
※『覚醒』の続きのようなもの







「静雄さん、よそいますよ」
「んも?おおわひひな」
「いいですからゆっくり食べてください」
「んん、あ、糸コンニャクいっぱい入れてくれ」
「静雄さん糸コンニャク好きですねぇ」




「…………………なにあれ」

臨也は信じがたい光景から目を離さないまま新羅に尋ねた。

「なにって鍋パーティーだよ。勝手に入り込んで来ておいてなにか不服かい?」
「そんなこと聞いてるんじゃないよ新羅」

なにあの鳥肌のたつ光景は、と、臨也はもきゅもきゅと糸コンニャクを食べあさっている静雄と、新妻よろしくお鍋をよそってあげている帝人を指差した。

「ああ、いつの間にか仲良くなったんだね」

よかったよかったと見当外れの答えを口にする新羅に、臨也は胡乱な顔を作る。

「どういうことなの」
「そんなの僕に言われても知らないよ」

おおよそなんの情報にもならない新羅の発言に、臨也は不服そうにふうんと呟いて酒をあおった。しかし目線は2人から離れないままだ。新羅は呆れたようにタメ息をついたようだったが気にしない。

なんだ?なんでいきなり……つーか帝人くん引っ付きすぎじゃないアレ?仲良いってレベルの密着じゃないっつーの。

視線の先では静雄がもくもくと鍋を楽しんでいる。どうにも糸コンニャクに夢中のようで、勢い余って頬につゆが散るのも気にしてないみたいだ。
………子供みたいに食べるなぁ、と思った次の瞬間、

「あ、静雄さん、つゆ飛んでますよ」
「ん?」

あろうことか静雄の頬についている鍋のつゆを、帝人が親指でぬぐった。

「…………」
「ちょ、臨也?」

新羅の制止を振り切って臨也は2人の前の席にどんっと座る。

「いやぁ、驚きだなぁ。君たちいつからそんなに仲良くなったわけぇ?」
「んだテメ」
「静雄さん、糸コンニャクできましたよ」
「あ、食う。入れてくれ」
「シカトだよ!」

華麗にスルーをかましてくる帝人に臨也は叫ぶ。

「てかまた糸コンニャク!?どんだけ糸コン好きなわけシズちゃん!」
「うるへーな。いいだろべつに」

糸コンニャクをもきゅもきゅさせながら言い返してくる静雄に剣はない。目がトロンとしているところを見ると、どうやら少し酔っているようだ。

「鍋でひたすら糸コンってどういうこと?おでんの白滝に群がる女子高生かよ!さっきからもきゅもきゅもきゅもきゅさぁ!」
「フも好きだぞ」
「肉を食えよ!」

見た目と反する物ばかり食べる静雄に全力で突っ込む。

いや、言っておくけど突っ込むってそっちの意味じゃないよ。性的な意味じゃないからね。本音を言えば今すぐにでも押し倒したいけど!

酒のためか上気した頬とうるんだ瞳を無防備にさらす静雄に、臨也は舌打ちをしたくなった。未だに静雄は糸コンニャクの食感に夢中だ。

「まったくシズちゃんはさぁ………」
「かわいいですよね」
「そうかわいい…………は?」

何か今不遜な言葉が聞こえたけど。
発言者の方を向くと、帝人がにこにこ微笑んでいた。
それに臨也も笑って返す。

「何を言ってるのかな?帝人くんは」
「静雄さんがかわいいって言ったんです」
「……………」
「……………」

バチィッと、

2人の間に火花が飛び散るのを、セルティは目撃してしまったと言う。

『し、新羅……帝人と臨也はどうかしたのか?』
「セルティ、こういうことには関わらない方が懸命だよ」
『?』
「セルティがわざわざ気苦労する必要はないさ!」
『し、しかし……』

もし2人がセルティのように影を出せるのなら、この部屋は真っ黒に染まっていただろう。そう思えるほど、対峙する彼らの空気は険悪だ。
静雄の方を見れば、自分が渦中にいることに気づいていないようで、ひたすら酒に舌鼓を打っていた。甘口の味が気に入ったようで、隣の門田に飲み過ぎだぞ、と注意されている。

「帝人くん………君さぁ、立場わかってるのかなぁ?バレたら困ることとかあるんじゃないの?」
「いいですよべつに。バラしてもらっても」

笑顔を消して無表情に見返してくる帝に、臨也は驚く。

「僕はあなたとは違って何も隠す気はありません。静雄さんが好きです」
「へぇ……そう」

臨也は手にもっていた酒をぐいっとあおった。酔いでもしないとやっていけないのが心情だ。

「でもシズちゃんは俺のだからねぇ、ざぁんねん。諦めてよ」
「モノ扱いですか……でもそれって1人よがりなんじゃ?」
「……君も言うようになったねぇ」

ズガガガンと、

落雷したみたいな幻覚が見えたと、後にセルティは語った。

『sししし新羅!ヤバイんじゃないのか!なんかヤバイ空気だぞ!』
「心配しないでセルティ。大丈夫大丈夫。臨也の大好きな三つ巴だよ」
『お前それでも友達なのか!?』

慌てて静雄の方を見ると、眠いのか少しうとうとしていた。

「俺の方がシズちゃんを愛してるって言ってるんだよ!」
「いいえ僕の方が愛してます!静雄さんは僕が幸せにします!」
「はん、高校生の分際で甚だ可笑しいね!そういうことはシズちゃんの壊した公共物の弁償ができるようになってから言いなよ!」
「好きだからって傷つける小学生男子のような人よりはマシですよ!」
「君が言える立場なわけ?非日常に憧れてる中2病者が!」
「いや僕は!」
「いや俺は!」

なんというか、ただの子供の喧嘩だった。セルティは安堵のタメ息を吐く。

『……なんか、大丈夫そうだな』
「そんなことよりセルティ、このお鍋おいしいよ!さすがセルティだね!」
『そ、そうか?よかった、杏里ちゃんに手伝ってもらったのが良かったんだな』

照れながら、幾分安心して静雄の方を見ると………

「もういいよ!本人に聞こうじゃないか!シズちゃんっ」
「静雄さん!」
「シズちゃんはもちろん俺のほ…うを……」
「おい静雄、寝るならソファにしろよ」
「んん〜」
「…………」
「…………」
「………………ドタチン」
「いや、違うぞこれは」
「門田さん、ダラーズから除名、でいいですよね?」
「落ち着けお前ら」

しかしながら膝に静雄を寝かしてる状態で言っても恋に狂った男たちが落ち着くはずもなく、門田は冷たい汗が背中をつたうのを感じた。

「静雄が倒れた先がたまたま俺だっただけだ」
「ぅ〜」

寝返りを打った静雄が門田の腰に抱き着く。

「あぁぁあああ!なにしてんのシズちゃん!」

臨也がこの世の終わりみたいな悲鳴をあげる。

「門田さん追放、と」

帝人が冷酷な顔をしてケータイを操っている。
当事者である静雄はすぴすぴと人の膝の上で寝ているし。

「…………はぁ、」

どうしたもんかと頭を悩ませながら無意識に静雄の頭を撫でた。
とりあえずは、
狩沢を連れて来なくて正確だったなと思いながら。
























HAPPY DAY!

(池袋は今日も平和)