▼ プロローグ
煩いくらいの蝉の声。
『あ』
空には落ちて来そうなくらいの入道雲。
「秋ー」
庭には弱い位の風に揺れる風鈴。
『何ー?』
垂れてくる汗。
熱いと投げ出された手にはうちわ。
「お隣さんの小磯さん家から電話ー」
『はーい…!』
そして、もう片方には携帯電話。
『もしもーし…』
《っあ、秋?悪いんだけどさ…》
耳元では随分昔から聞いている声。
今日は炎天下の日。
手にはコンビニで買ったパン達やジュース達。
外は相変わらずの晴れ。こんな中、少女は自分の自転車に跨がり、炎天下の中、頬に汗を垂らしながら漕いで行った。