下へと続く階段を、足元に気を付けながら慎重に降りていき、その先にあった梯子がところどころに掛けられている空間で梯子を降りていき、暗く怪しく光るライトを帯びる長い廊下を周りを気にしながら歩いていき、別れ道のある場所まで何とか無事に辿り着いた。
どちらに進むべきか、天馬達はワンダバの指示を待つ。

《そうだ、そこを左へ行くんだ!》
「オーケー」

ワンダバが指示を出すのはそう時間はかからず、直ぐに指示が出る。左だと言われた道へ、フェイは天馬達に合図すると、皆も頷いてフェイに続くようについて行く。
決して走らず、忍び足で徐々に歩き進める。
再び現れた分かれ道にも、ワンダバは事前に指示を出して、その先にやるべき事を伝える。

《そこを曲がって奥の扉を開けろ!》

ワンダバのその指示に、天馬達はまた歩き進んでいく。
今の所問題なく進めており、彼の言った通り安全かつ順調に進んでいた。曲がった先を歩き進めれば、そこには随分と頑丈で厳重そうな扉があり、フェイはその扉を開けようとボタンをポチポチと押していく。が、ロックを解除しても、その扉はびくともしなかった。

「…あれ?開かないよ?」
《!…待ってくれ、セキュリティコードが違うようだ》
「手強いね」

どうやら、ワンダバが試したコードでは開かなかったようで、ワンダバは急いで別のセキュリティコードを入力していく。

《これでどうだ?やってみてくれ》
「……ダメだ」
「そんな…」
『何とかならないかな…』

改めて入力したコードでフェイに試してくれと言うも、そのコードでも違ったらしく、扉は全く反応示さない。扉を開ける事が出来なくなり、その先に進めないとなると、一気に皆の不安も上昇する。無理して開けようにもきっと警備の方が反応してこちらも危ないだろう。
それも警戒してフェイは下手に手出しも出来なくなってしまい、ワンダバへと通信する。

「ワンダバ、他に道は?」
「…あるにはあるが、」

ワンダバの目の前にある画面で、その場からでも直ぐに行ける道を見つめる。だが、そのルートを見るなり、ワンダバの目は厳しい物となった。
だが、選んでいる時間も余裕もない。ワンダバは青く示されているダクトを見つめた。

「…え?ダクト?」
《セキュリティコードの解析には時間がかかる。待ってはいられまい》
「…分かった」
《気を付けて行け》

天馬達の頭上にある一つのダクト。あそこからならこの扉の向こうへと行ける。だが、そこは狭くここよりももっと暗いだろう。そして、逃げ道もあまりない。限られた空間の中で無事に辿り着けるかどうかが問題だった。
だがそこしかない道ならばフェイは頷くしかない。全員に忠告し、ワンダバは彼等を示す赤い点を見つめた。

『なんか、本当に悪い事してるみたいでちょっと楽しいかも』
「お前実はそれが本音だったろ…」
『そ、そんな事…ナイヨ』
「片言だよ悠那…」

い、いいから早く上げてよ!と図星を突かれた悠那が、真上に居る剣城とフェイに両手を挙げては訴える。しーっと後ろにいる天馬と神童に静かにしろと訴えられたので押し黙るが彼女の顔面は僅かに赤く染まっていた。
背丈の問題で、悠那は天馬と神童に抱えられながら剣城とフェイに腕を取ってもらい、何とかダクトの中へと入る事が出来た。
錦を最後に、天馬達は全員ダクト内へと潜入出来たので、天馬とフェイを先頭に突き進んでいく。
暫く進んだ所で、道が塞がれているのが見えた。

「非常用の解除装置がある筈だ」
「…あれかな?」

解除装置が近くにないか、とキョロキョロと探してみれば、近くの壁に小さな開き戸があり、それを開けてみれば、レバーのような物がそこにはあった。
それを見て、これがフェイの言う解除装置なのだと天馬はそのレバーを引く。すると、目の前の塞いでいた扉がゆっくりと上に上がっていき、この薄暗いダクトの中を淡く照らし出す。
完全に開いたのを見て、恐る恐る覗き込んでみては、目の前には梯子と、それ以外の道はなく下は落ちたら怪我では済まないくらいの落とし穴となっていた。

とりあえず、と梯子を降り切った天馬達は目の前にある大きな空洞部を見つめてはギリギリの足場から踏み外さないように茫然と立ち尽くした。

「「うわぁ…」」
『ひぃ…』
「……進入路はあそこにしかない」
「届かんぜよ…」
「…やるしかないな。皆の力を合わせるんだ」

下が見えない程の闇に、思わず声を上げる天馬、信助、悠那。フェイは辺りを見渡し、進入路になるであろう物を見つける。
ここからかなり離れた壁際に設置されている梯子と扉。
そこにしか進入路が無いのなら、そこまで行くしかない。あの梯子はどうやら折り畳み式で短くなっているだけで、伸ばせばちゃんと長くなるだろう。神童はそこまで考えると早速作戦を立てた。

「わしが一番下をやるきに」
「その上に俺だな」
「じゃあ、神童君の上を天馬だね。なるべく重さを控えたいから悠那と言いたいけど、流石に危険だし」
『そんな事ないよやりt――』
「ダメだ。天馬にしとけ」
『京介のケチ』
「ケチじゃねぇ。お前がやると全員巻き込んで落ちるだろ」
『………………大丈夫だよ』
「今考えたろ」

ダメだ、と剣城に念を押され、悠那は渋々と惜しさがる。結果的に錦を一番下の踏み台にし、剣城とフェイと悠那が錦を支えたり足場を支え、錦の上に神童が乗り、神童の上に天馬、天馬の上に信助が軽々と登って見せた。
ようやく登り切ったのを見て、悠那が信助と梯子の合間をジッと見つめる。あと少し、後少しで届きそうで届かない。信助もそれは分かっていても背伸びをしてもギリギリ届かない高さであった。

「んんー…っ!」
「どう…?届いた…?」

少し辛そうな声を上げながら天馬が信助に問いかけるも、結果は同じ。信助は自分の腕が痛いぐらいに伸ばしながらもう目と鼻の先まで見えている梯子を見据える。
ぷるぷる、と爪先だけで支えていた身体が震え始め、それはやがて下にいる天馬達にも伝わっていた。
そして――

「うぅ…っく、……ぅあっ!?」

グラッ…

「「「「うわぁあああ!!?」」」」

「ッ―――跳んで!!」

震えが信助を襲い、天馬を巻き込み、神童と錦は支えきれなくなり、やがて後ろ向きに大きく体勢が崩れてしまった。
だが、そこで天馬は咄嗟の判断により、信助を梯子の方へと投げ込み、信助もまた自分のジャンプ力を活かし梯子を掴んで見せた。
後は重力に従って落ちるだけ。ここで根性を見せたのは、錦も神童も自分の上に乗っていた者を離さず何とか耐えた事。天馬は壁にぶつかるのを何とか手をクッション代わりに避けて、まだ自分は落ちていないと多少の痛みは感じるも、安堵の息を吐いた。

ガラララッ…

何とか危機を避けた頃、信助の掴んでいた梯子が信助の体重に耐え切れなくなり重力に下がってくる。それを見てから、錦達の救出に移り何とか誰一人落ちる事なく、最後の天馬が助かった所でようやく全員揃って安堵の息を吐いた。

「はあ…助かった…、良かった…」
「肝が冷えたぜよ…」
「流石は信助のジャンプ力だ…」
「へへへっ」

上がってきた事に疲労感がどっと流れ込んで来ては、少しの休息。キャラバンの中でホログラムを見つめていた葵達もほっと胸を撫で下ろした。見ているこちらも何だか疲労感を感じているのだろう。

『京介、私やっぱりこれやらなくて良かったと思ったよ』
「…はあ?」
『もし私がこれやってたら皆を落としてた…』

うあああ良かったよおおお皆さあああん!!ともはや泣き出してしまいそうな勢いで天馬と神童、そして錦に抱き着いては騒ぐ悠那。そんな彼女の姿に天馬と神童は焦ったように頬を赤らませる中、その光景を見ていた剣城とフェイはやれやれと呆れたような、どこか微笑ましそうに口元を緩ませていた。



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