「大丈夫…?」
『フェイ、疲れてるんじゃ…』

膝をつくフェイに二人は心配そうな顔をする。
悠那の言葉に、フェイは苦笑の笑みを浮かばせると立ち上がってみせた。

「デュプリ8人は、さすがにオーラの消耗が激しいんだ……でも、やるしかない」
「フェイ…」

きっと、無理はするなと言っても、この状況になってしまうと無理でもしなくてはいけないのだろう。何せこのデュプリを消してしまえば、こちらに戦えるチームは三人だけしか居なくなってしまうのだ。フェイは疲労の顔すら見せずに目の前の試合を見つめている。
そんな彼に、労いの言葉すらかけられず、二人は自分のポジションへと戻った。

ピィ―ッ!

「うおぉおおお!!」
「フェイ!?」

試合開始のホイッスルと同時にボールを持ってプロトコル・オメガへと勢いよく斬り込んでいくフェイの姿に、天馬は驚きの声を上げ、悠那もまた目を見開かせる。
ただでさえ消耗の激しいデュプリを出しているのにも関わらず、フェイの勢いは止まらなかった。

ボールを持って上がっていくフェイに、化身アームドを解除しないままアルファがボールを奪おうと足を出す。
お互いの圧倒的な力に、ボールは僅かに歪む。

「「うおおおおお!!!」」

だが、やがてお互いの力が相殺されたのか、ボールを中心に残したままフェイとアルファは互いに距離を取る。
ここからどうなるのか、次元の違う二人の姿に天馬と悠那は息を呑む。

ピッ

ふと、小さな無線機のような音がアルファの頬に付いている物から聞こえ、それは緑色に淡く光るとそこからアルファにしか聞こえない声が聞こえてくる。

「こちらアルファ。―――…それは事実ですか?………Yes、ご指示のままに」

と、ここで無線機の相手との会話が終わったのか、アルファは無線機を切ると、次には化身アームド状態を解いた。そして、その会話の内容を知らないエイナムは、アルファに近寄る。

「どうしました?」
「先程行ったインタラプト修正が無効化された」
「え?…誰がそのような、」
「恐らく奴等だ」

インタラプト修正、というのは彼等がサッカーという存在を雷門のメンバーから消し去った事を差すのだろう。だが、それも無効化にしたのは天馬自身と、それからあの自分達も知らない存在であるフェイ。
そう確信つくとフェイの方に向けていた視線を逸らし、このフィールドから立ち去ろうとしていた。

「どうしたアルファ」
「この試合…中止とする」
「おいおいキミ達ちょっと待――」

シュンッ

アルファ達が立ち去るのを見て、彼等の会話が聞こえていなかったフェイは、どこに行くのかと声を掛ける。そして、審判もまたアルファ達に何故試合を放棄するのかそちらに駆け寄っていく。だが、そんな彼の言葉も全て言い終える前に彼自体も消えてしまう。
彼等の考えている事が今一分かっていない天馬と悠那はフェイに近寄っていく。

「フェイ、これって…」
『何が起きたの…?』

二人のそんな質問に、フェイはアルファ達の背中を眺めながらひと遅れながらミキシマックスを解く。そして、腰に手を当てアルファ達にとてもいい笑顔を向けた。

「じゃあ、棄権って事で僕達の勝ちだな!」
『「え?」』

まるでいつぞやの試合みたいな、そんな光景とパターンに、二人は拍子抜けた声を上げる。
次々と消えていくプロトコル・オメガのメンバー達は特に何も言わず、やがて全員が消えていき、タイムマシンのような乗り物も上空に消えていく。そして、何事もなかったかのようにこの浜辺のフィールドも消えた。

「…フェイ、ねぇ教えて!今何が起こってるの!?サッカー部は…サッカーはどうなるの?…フェイ!」

アルファ達が完全に去ってから、フェイに振り返るなり必死に今の現状を知りたがる天馬。きっと、試合中も不安だらけだったのだろう。自分が帰ってきていたら皆は自分の事どころかサッカーを覚えていない。サッカー部も消えていたのだから。
そして、サッカーの存在を消そうとするアルファ。そうはさせまいと現れてくれたフェイ。サッカーの記憶を思い出しそうになっている悠那。
天馬の頭はもう、パンクしそうだった。

―――――…………
―――………

場所は少し離れ、海辺付近まで移動した一同。
天馬と悠那は改めてフェイから何者なのか、今どうなってしまっているのかをフェイ本人から聞いていた。

「僕らは、200年後の未来からやって来た」
「…未来?」
『それも、200年も…』
「そう。サッカーを消そうとする者を阻止する為に」

どんな話が聞けるのかと彼の言葉に耳を傾けてみたはいいが、その話しはいきなり突飛過ぎて更に、二人は未来人ときた。信じられないようなそんな話の切りだしに、二人は訝しげな表情でフェイを見つめる。

「…パラレルワールドって分かる?」
「パラレルワールド…?」
『何それ?』

よく知らないのか、二人は首を傾げてみれば、次にフェイは自分のお腹に巻いていたベルトの翡翠色の宝石のような物を二人の目の前に差し出して見せる。
その宝石のような物が淡く輝きだした時、四人を包み込む、電脳空間が生み出された。

「うわ!?」
『!?』
「時間のある地点に変化が起きると、それ以降の世界に違う流れが出来るんだ。それが、パラレルワールド」

フェイの説明に合わせるように、その電脳空間は、時間の流れを表すように矢印が出現し、変化が現れた瞬間、一つだった矢印は三つに分かれ始めた。
この三つの矢印に分かれる事がフェイの言うパラレルワールドという事だろう。

「アイツらが時を超えて、雷門中サッカー部に関わる重要な出来事に影響を与えたせいで、作家0部が無いという世界が出来てしまったんだ。つまり…」
「雷門中サッカー部が消された…」

その証拠に、天馬の横に立つ悠那が雷門中サッカー部の事、そして、天馬に関する記憶が全て別の記憶と書き換えられてしまっている。それを知った悠那は、新たな事実にショックを受けたのか唇を強く噛み締めた。



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