残り時間は僅か。織田軍と今川軍の因縁の決着はつけられるのか。
神童も化身アームドを物にし、一夜城も鉄壁と言っていい程防いでいた。勢いは織田の方にある。
一方、同点にまで追いつかれてしまった今川基、プロトコル・オメガの表情は曇っており、ベータも納得いかない表情をしていた。

「奴等を徹底的に叩き潰す!!」
「「「「おお!!」」」」

審判が法螺貝を吹き上げ、先攻であるベータ達が動き出す。
エイナムにボールが渡りそのまま上がってくる。そんな彼を剣城がスライディングを仕掛けるも、当たる直前でレイザへとパスを出す。上がって来ようとした時、神童が動きだした。

「この試合、必ず勝つ!」
「――今だ!」

フリーである神童がボールを持ち、敵陣へ突っ込んで行く姿。それを見て、ワンダバはチャンスだと思ったのだろう。その声と共にミキシマックスガンを駆け上がる神童と、信長へ向けるなり引き金を引いた。
マイナスのエネルギーが信長のオーラを吸収し、それをプラスの銃口が神童へ向けて放たれる。
徐々に、神童の雰囲気が変わって行くのを感じた。

「ミキシマックスコンプリート!」

神童と信長のミキシマックスが成功された。
髪と瞳に赤身が増し勇ましさがあり、髪型も侍らしく、信長らしく、髷が結われていた。

「神サマ、ワイルド…!」
「うむ。よき面構えじゃ」
『やったやったー!』
「バカな…!何故今度は出来た!?」

やはり、ミキシマックスはその人のオーラを貰うだけあり、神童の雰囲気は完全に信長のようになっていた。茜も神童の新たな一面を見ては興奮気味に目を輝かせ、信長も面白そうに呟き、悠那も嬉しそうに両手を挙げて喜んだ。
今まで失敗続きだったが故に、ベータはミキシマックスの成功に信じられないと驚きの声を上げる。それでも止めようとオルカ、ドリム、ネイラが彼にマークを付こうとするも、神童は静かに、素早く、彼等を交わして行く。まるで、舞い散る桜をバックに、刀で敵を斬っていくような鮮やかさ。
そのまま彼は、敵陣へと斬り込んで行き、ガウラとメダムもまたマークに付こうとするも、残像を残すかのように二人の間を通り抜ける。

ゴール前にはキーパーであるザノウのみ。
神童は、足を止めボールの上に片足を乗せては瞳を閉じる。
再び瞳を開かせた時には、刹那のようにボールを蹴り上げて、最後の一撃に力を込めてシュートを放つ。

「“刹那ブースト”!」
「くっ…キーパー――」
「お前の相手は俺だ!!“虚空の女神アテナ”!――アームド!」

神童のシュートに、ザノウが対抗しようと必殺技を出そうと構える。だが、その間に何とか追いついてきたベータが化身アームドをして威力のあるボールを蹴り返そうと足に力を込める。このくらい、と耐えて見せるも、アームドしたベータですら止める事が難しかったのか、力負けしてしまい、ボールに巻き込まれ、更に後ろにいたザノウまでをも巻き込んでゴールネットを揺らした。

法螺貝が長く響き渡り、逆転ゴールだと矢嶋もまた実況で叫んだ。

「…ぶぅ」
「…やった」

拗ねるように、ベータは頬を膨らませる。そんな傍ら、神童はミキシトランスを解くなり、嬉しそうにミキシマックスが出来た事と得点を決められた事を喜んだ。
再び、法螺貝が長く鳴り響き、試合終了を告げた。

この試合は、織田軍基雷門が勝った。
天馬達は神童の元へ駆け寄っては喜びを分かち合い、太助たちも共に手を繋いでは喜び合った。更に、喧嘩になりかけていたワンダバと藤吉郎ですら拳を軽くぶつけ合っていた。

「信じられない…私達が負けちゃうなんて…」
「雷門の皆を元に戻して貰うよ。洗脳を解くんだ」

茫然と喜び合う天馬達を余所に、刻まれた得点紙に、ベータはぽつりと呟く。2.0にバージョンアップしたからと、アルファよりも強いと言われた自分達が、何度も天馬達の試合に勝利してきたのに、一度の敗北で、ベータは燃え尽きたように大人しくなっていた。
そんな彼女の隙をつき、彼女の周りをフェイを中心に包囲する。それに気付き、ベータは再びむすっと頬を膨らませると、スフィアデバイスを出してはマインドコントロール波を解除して見せた。

「…解除しました。これでいいでしょ」
「どう?悠那」
『え?…確かに、前よりかは体も軽くなった気はしたけど…』
「ふんっ、貴方にかかっていた洗脳なんて、もう無いに等しかったわよ。解いても意味ないくらいにね」
「良かった…」

悠那を含め、黄色い靄がデバイスに吸収されていく。それを見て、フェイは悠那に何か異常は無いかと視線をやる。そもそも、悠那の中の洗脳はベータの言う通り、ほぼ無いに等しかった。それもこれも、ゴッドエデンでの特訓のお蔭だろう。その言葉に、天馬もまた胸を撫で下ろしては安堵の息を吐いた。
だが、まだ問題はある。
いくら雷門の皆の洗脳が解けても、まだ戻って来ていない存在があった。

「円堂監督は何処だ」

自分達の大先輩であり、一緒に革命を乗り越えた監督である円堂守。
この試合に勝ったら、円堂も返して貰う予定だったからこそ、彼女に尋ねた。デバイスに閉じ込められている事は知っている。だが、ベータはうんざりとした様子で「もうここには居ないわ」と告げた。

『居ないって…どういう事!?』
「ちょ、ちょっと!気安く触らないで下さる?」
「悠那!落ち着け!」

せっかくここまで戦ってきて、雷門の皆の洗脳まで解く所まで来たのに、円堂だけはまだ取り返せないなんて――
ガシッとベータの両肩を掴んでは必死にどういう事だと、尋問する。思えば、悠那は円堂を失う事に一番悲しみ、取り乱していた。この事実を簡単に受け入れられる訳がない。そんな彼女の腕を錦と一緒に掴んではベータから離す。

「そんなに信じられないなら、調べてみたら?」

ベータは汚れを払うかのように自分の肩を軽く叩きつつ、スフィアデバイスをフェイへと投げる。
言われた通り、フェイは受け取ったデバイスを自分の手首に付けた機械で調べる。だが、いくら調べても、フェイの表情は晴れず首を振る。
この中には円堂守はいない。その事実に、再びショックを受けた。

「そんな…じゃあ、円堂監督はどこに…?」

天馬のその呟きの直後――上空が一瞬、怪しい光を帯びた。



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