「うふっ」
『……、』
「ほお、これは中々…」

にっこりと面接官に向かって優しそうな笑みを浮かばせる葵。その隣では、悠那が恥ずかしげに指を遊びながら面接官に目線を合わせる。そんな二人の姿に面接官の侍は、顎に手を当てながらまるで品定めをするみたいに下から上まで見やる。
そして、二人をよく見た後、次にはポーズを決める水鳥と茜に移った。

「おぉ〜!良いではないか、良いではないか!」
『(どこぞの悪代官ですか…)』

葵や水鳥先輩、茜先輩に下心見せやがってぇぇええ…
ジトッと目線を送るも、それは葵に気付かれたのか、彼女は笑みを浮かばせたまま悠那の脳天にチョップを入れる。
あまりの痛さに涙目を浮かばせながら葵の方を向けば「我慢我慢」と小声で言われた。
そうこうしている間に、その面接官の視線は天馬達の方へ向けられた。

「お、お?これは…うむ……微妙じゃな」

彼の好みに合わなかったのか、天馬達を見た後、更に微妙と思わせるワンダバの変装に首を捻らせる。マネージャー+@で面接官の好感度は上がっていたが、天馬達で徐々に落ちてきている。これはヤバいと、思った矢先。好感度を一気にゼロにしてしまう人物が面接官の前へと出てきてしまった。

「ぎょわああああああ!?」
「合格ぜよ」
「不合格ぅううう!!」
「「「「えぇええ!?」」」」

真っ白な肌に赤い丸い頬。おまけに唇を少しだけ赤くしたそのどこぞの某殿様を連想させるような化粧をした錦の登場により、せっかくの面接は合格を匂わせた不合格を与えられてしまった。

「こんなモノを見せて信長様の気分を悪くさせたら困るからのう。帰った帰った!」

そこを何とか…!と言いたい所だが、まずその前に錦のふざけた化粧を何とかしないといけない所から始めなくてはならない。
一同は顔を見合わせると、何も言えずその場から一時退却となった。

「――お前のせいだ錦!」

少し離れた所で、水鳥は抱えていた苛立ちを錦へとぶつけ始めていた。

「ウケると思ったぜよ!全く、あの面接官は笑いが分っちょらんのう!」
『笑いを取りに行ってるわけじゃないのですが!』
「まあまあユナ落ち着いて」
『ぐす…恥を覚悟に行ったのに…!うえっ…ぐふっ…』
「そんな泣く事ないだろ…」
『京介は私の勇気を何だと…!』
「今嘆いても仕方ないさ。次の作戦を考えなくちゃだな」
『っ!』

そして、錦へと怒りを持っていたのは水鳥だけではなく悠那もまた目に涙を浮かばせながら錦の笑いへの執着にツッコミを入れた。彼女の言う事も尤もで、自分達は笑いを取りに行ったのではなく、信長のオーラを取りに行く為、踊り子という変装をし、その変装も嘘にならないように今まで練習をしてきた。
それを今無駄にされ、更に悠那の妙な勇気すらも無駄にされ悠那は嘆きの声を上げた。
そんな彼女を葵と剣城が声を掛けるも、どうやら彼女はそれだけでは収まらないのだろう。中々嘆くのを止めずに居る。すると、神童が彼女へと声をかけ、再び頭を撫で始めた。
それにより悠那は再び顔を真っ赤に染め上げて直ぐに口を閉じる。

「…どうする天馬?」
「…信長のオーラを貰うには、何としても入らなくちゃ…」
「「「「ううーん」」」」

神童と悠那の二人の様子に、信助は天馬を気にかけ声を掛けるも、天馬は二人の様子を見た後に遅れて返事をする。
だが、その何としても入らなくてはならない状態をどう打破していくのか、追い詰められた天馬達は、必死に作戦を思いつくあたり、手当たり次第に実行しようとしていた。

《顔を笠で隠して面接をしよう作戦》

先程の面接で顔を晒してしまったので、その顔を隠す為に笠をかぶって面接を行い、通ればそのまま素通りしテントに入ろうという作戦。

「よし、合格」

そして、その作戦は上手くいきそうになってはいたのだが――

「!――コラァ!そこ!

混じり込んでもダメだあ!!」

ワンダバの異様な変装だけは隠せなかったのか、そこでバレてしまい、せっかく中に入れた天馬達までバレてしまい追い出されてしまった。

《荷台の中に隠れる忍び込み作戦》

大きな木材の桶を持った運び屋が近くにいたのを利用し、その中へと忍び込んで素知らぬ顔でこの宴に参加するという作戦。

「よし、合格だ」

それも危ないながらも上手くいきそうになってはいたのだが――

「待て!

―――出てけぇ!!」

勘のいい面接官だったのか、桶の蓋を開けるなり天馬達が隠れていた事を見破り、天馬達だけ追い出されてしまった。

《配膳係に成り代わる作戦》

これはもはや天馬達の諸刃の剣。
配膳係のフリをして中に入ろう作戦である。

「配膳係がいないので手伝いに参りましたぁ〜(裏声)」
「カタカタカタカタ方」

「変装してもダメだあああああ!!」

天馬の必死の裏声も、お茶の準備も、ワンダバのカラクリに見せた演技も全て台無しになり、やがて面接官の怒りは頂点に達したのか顔を真っ赤にして叫ばれてしまった。
この作戦もまた失敗に終わった。

「どうしたら良いんだろう…」
「うーん…」
「せっかく練習してきた踊りが無駄に…」
「そう言う問題じゃないだろうが…」

すっかり気分も落ちてしまい、案すらも出なくなってきた一同はお手上げ状態となっていた。
最後の作戦だって、最終手段の作戦だったのだ。その最終手段すら通用しないとなると、これ以上良い作戦など思い付かない。
肩を落とす一同に、葵は裾の中から大介を取り出した。

「大介さん、良い方法ないですか…?」
《ZZzz…》
「…寝てる」

ズコーっと葵の手の平で狸根入りをする大介に、一同はこけるしかなくなる。

『年寄りだもんねぇ〜』
「そういう問題なのかな…」
「良い気なモンぜよ!この太鼓のバチで粉々にしてやるぜよ!」
「元はと言えばお前の所為だろうが!」

年寄りだから、と言う悠那へ天馬がすかさずそうなのか、と首を傾げる。そんな中、最早自分のやった事を棚に上げて、今にでも大介をバチで粉々にする勢いの錦。彼の背後からは怒りの炎が見えそうになっているが、それを水鳥が更に彼へ怒りをぶつけた。
そんな事をしているからだろうか、気付けば自分達が並んでいたあの長蛇の列は無くなっていあ。

「踊り子の募集はここまでとする!」
「「「「ええ!?」」」」

ここで、踊り子の募集は打ち切られてしまい、一同はついに踊り子として宴へと参加すら出来なくなってしまった。



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