Nという人は、全てを平等に愛する人だった。確か博愛主義だとかいうんだったかもしれない。柔和な笑みを浮かべてどのポケモンにも等しく距離を無くす。そして内側の人間にも。つい最近まで人との接触が極端に少なかったらしいというのも要因のひとつなのだろうけれど、一度彼の内側へ入ることに成功した僕は、その愛を注がれることになった。僕が求めるソレとは違う愛を。

「トウヤ!」
名前を呼ばれて振り返るとふわりと柔らかな緑が両手を広げていた。どうやらおいで、と言っているらしい。傍らで先程までNと戯れていたゾロアが丸くなって穏やかな寝息をたてている。どうやら手持ちぶさたになったらしい。にこにこふわふわ。裏表のない感情が惜しげもなく晒される。疑いようもない慈愛の念。
近づいていって開かれた胸に抱きついてみた。すり、と温もりに擦り寄ると頭から抱えられて同じように頬擦りされる。少しだけ擽ったいけれど離れ難くて体勢だけ整えた。
「N、あったかいね」
「そう?トウヤも体温高いけど……眠い?」
「子供じゃあるまいし……でも、ちょっと、眠いかも」
とんとんとリズム良くNの掌が僕の背中を叩く。その音に耳を傾けていると本当に眠くなってくる。これはどういう効果なのだろうか……博識なNは知っててやっているのだろうか。
「寝る?」
「んー……」
Nの問いかけに曖昧な音を返すと支えていた腕を退かされて膝の上に転がされた。
「Nも、」
「僕はまだ眠くないよー」
くすくすと笑うNの首に手を伸ばす。不思議そうに僕を見るN。
「一人じゃ寝れないの?」
子供じゃあるまいし。もう一度そう言ってやろうとして、やっぱりやめた。
「うん、寂しい」
言って、ゆっくり瞼を降ろした。それでもNがきょとんとする様が思い浮かべられる。予想とは違う反応だっただろうから、きっと戸惑っているんだ。
「ブランケット、いる?」
暫くの沈黙の後、漸く返ってきたのは少しだけ間抜けな問いだった。思わず少しだけ噴き出す。
「Nが一緒に寝てくれれば、寒くないよ、きっと」
「そう?じゃあ、ちょっとだけ、お昼寝にしようか」
笑ってしまったことはあまり気にしなかったらしいNは満足そうにまた笑って、僕を膝から降ろして横に転がった。
「身体痛くなりそう」
「たまにはいいじゃん」




和やかに過ぎる

(眠くないなんて言って)(先に眠りに落ちたのはNだった)













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