「グリーン、」
そいつが部屋に転がり込んできたのは、真夜中のことだった。そいつは何を語ることもなく数十分近く俺の名前を縋るような声で呼んでいる。
「……僕はやっぱり、マサラには帰れないよ」
やっと言葉を発したと思ったらなんの脈略もない。まあ今に始まったことではないが、何かあったんだろうなとレッドの安心する言葉を探す。コイツの複雑であまりに深い心を読み取ることができるのは幼なじみだからなのだろうか。
「なんかあったのか」
俺が極力優しい声で問いかけると、信じられない言葉を口にした。
「…ゴールドが、僕のことを、好きだって」
ああ、アイツはついに抑えられなくなったのか。いつかは切れると思っていたそれがレッドにどんな影響を与えてしまうかなんて、アイツは考えることすらできなかったんだろう。いや、考えたって、こんなことになるとは“他人”は思わないか。
一通りくるりと考えを巡らしてから腕の中の存在を抱きしめた。
「帰りたいのか?」
「そうじゃない…と、思う」
「けど、帰らない、と帰れない、じゃ違うってか?」
ぐ、と息をのむ音が聞こえてまたひとつ手の甲に冷たい感覚がした。図星、か。
「僕は、彼ならよかったのに」
そう諦めたように吐き捨ててから、また嗚咽を漏らし始めたレッドの背をリズムよく撫でつけながら、美しすぎる赤から次々とこぼれ落ちる酷く透明な雫を眺めていた。


いつまでも白く

(ああ、こいつらは、きっと永遠に染まらない)









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