「好きだよ、」と、そうレッドの口から、まるで零れ落ちるかのように放たれた言葉を、俺はうっかり聞き流しそうになった。(いや、もしかしたら聞き流していた方がよかったのかもしれない。)
「……は、」
俺の声はあまりの驚きに言葉にならずに飛び出した。レッドはそんな俺をチラリと視線だけで一見してからまた手元の本の活字を追う作業に戻った。
「…レッド、それって」
「冗談だよ」
俺がそれをよしとせずに雑誌に手を乱暴に置き、問いただすような視線と語調でレッドに訴える。しかしそれは間伐いれずに否定の言葉に遮られた。
「…冗談だよ…グリーンは好きだけど、僕らは大切な幼馴染みだ」
その後に続いた言葉も。一見肯定的な言葉に聞こえるその言葉すら、俺の想いに気付いていて、それでも“幼馴染み”で“一番の親友”というポジションから離れたくないという、裏側の言葉。
「そ、か……」
自分でも驚くくらいに声が掠れた。それほど一瞬を緊張していたんだ。それほど、待ち望んだ、言葉だったんだ。
「…グリーンは、」
スッとまたレッドの声は空気の合間を縫うように馴染むように聞こえる。届いたのは俺の名前と、後に文を続けるための文字。しかしその文はレッドの意志を持って消された。何が言いたかったのかはわからない。俺とレッドはそんなものだ。互いに依存していることは認めざるを得ない俺たちの関係でも、アイツの分かり難い思考回路を理解できる程互いを分かっていることとは別の話だ。
「…そうだ、な」
だからこそ、俺達の関係はよりあやふやになる。俺ははたと気付いてその話を切った。

宙ぶらりんの関係

(どっちつかずで、曖昧で、わからない、)






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