俺が先を急ぐとアイツは後を振り返り、俺が右を向くとアイツは左を向き、俺が好きだと言うとアイツは嫌いだと言い、俺がイエスと言うとアイツはノーと言い、俺が白と言うとアイツは黒と言う。
俺とレッドはそういった関係だった。名前からして補色、つまり真逆に位置する俺達なのだからそれは生まれて持った運命なのかもしれなかった。それを俺はお互いを補完しあえる関係だとして気にも止めていなかったし、むしろそれでいいのだと思っていた。
それが、突然にソイツは現れた。一見してまた俺ともレッドとも違った金のソイツは、それなのに何故か根の部分で俺にレッドを思わせた。昔の、そうだ、丁度ソイツくらいの歳の頃の、レッドを。
「レッドさん、グリーンさん、お久しぶりです!」
元気の有り余った声が聞こえて、妙に爆発した前髪が覗く。(まあ俺もよく言われるのだが。)
「よお、ヒビキ!」
俺が声をかけるとレッドは目線を少しソイツに向けただけでまた抱きかかえたピカチュウに戻した。けれどそれは人見知りどころか人嫌いなレッドの許容の印だった。
「えへへー暇だったんですよ!グリーンさん日曜以外でも大抵レッドさんと暇してるでしょ?」
レッドさんともバトルできるし一石二鳥なタイミングなんですよー、とぬけぬけと言いながらヒビキは後ろのドアで狼狽えるバクフーンをボールに戻した。
「ダメダメ、やらねーよ」
「なんでですかー!?いいじゃないですか!」
「俺は今日もジムで頭使ってバトルした後なんだよ!」
「ぶーぶー!…レッドさん!レッドさんはやってくれますよね!?」
俺がダメだとわかるとわくわくとした顔でレッドに話を振った。まあコイツの答えなんてわかりきっている。
「…やらない」
ほらな。コイツは随分変わってしまった。そして俺はそんなコイツのこともちゃんとわかる。なのに、
「えーっ!?やりましょうよー!」
この言い知れぬ不安は、何なんだろう。焦燥感に似たその感情が
「…また、山で待ってる」
そういって微かに笑ったレッドにさらに掻き立てられた。

刺客

(俺にはレッドが、アイツには俺が必要なのだと、暗示のように言い聞かせて)

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金に攫われそうで嫌な予感に苛まれる緑。赤は赤で全くそんなつもりはないんだろうけどね。


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