低いテーブルに置かれたココアのマグカップ。まだ半分も飲まれていないそれは半時間程前に俺が淹れたものだった。元々猫舌なレッドのために温めだったせいで、今はすっかり冷めてしまったようだった。さっきまでゆらゆらと見えていた湯気はすっかり消えていた。
「…嫌い、」
俺の腹の辺りからポツリと声がした。
「…嫌いだよ、グリーンなんか」
心地いい声が紡ぎ出す嫌い、という言葉。どう考えたって喜びの対象ではないそれを普段のレッドがそう言ったなら、俺は立ち竦んで動けなくなっていただろうか?逆上して押し倒しでもしていただろうか?ともかくこんな穏やかな雰囲気の中で交わされる言葉でないことは確かだ。
しかし、俺は全く動揺もせずに「ひでーなー」と言い返した。なぜならきっと、レッドが俺の腕の中にいて、その頭をぐりぐりと俺に押し付けているからだ。
「…グリーン、嫌い」
「まだ言うか?どうしたら好きになってくれんの?」
「…無理だよ、グリーンだから」
「俺がグリーンじゃなかったらレッドは俺が好きなのか?」
「…ううん…もっと、嫌い」
「そっか」
なんでこんなに嫌い嫌いと連発されなければいけないのかは全くわからないが、始まりも終わりも不明瞭すぎるその言葉の応酬にレッドから僅かに振動が伝わってきたから(コイツが笑うなんて珍しい)まあ、それでもいいかと俺もレッドの体重がのしかかった腹筋を震わせた。


目を見ないで、嫌いと囁いて


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お題抜粋。


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