夕暮れの色が細い黒髪を撫でるように通り抜けて俺まで届く。なんとも形容し難いその輝きに見とれながらもなんとか必死に自分の手に収まっている分厚い本に意識を戻す。じいさんの研究室から拝借したうちの一冊だが、さっきから頭には何も入ってこない。
挙げ句、目の前のソイツがぐりーん、と俺の名前を呼ぶもんだから、俺は手近なペンを挟んでその本を閉じた。
「レッド?どーかしたか?」
名前を呼んで視線を合わせて問うと夕陽に負けない綺麗な鮮明な赤と視線がかち合った。毎度毎度そのたびに跳ねる俺の心臓はいい加減なんとかしなければ。
「…… ……」
じい、と見つめてくる真っ直ぐな瞳の持ち主は一言も発することはない。普通の奴ならここで首を傾げるか怒るかのどちらかだが、これは自惚れでもなんでもなく俺はコイツを熟知しているし、俺に対してだけは用があるのなら声を聞かせてくれる。つまり黙り込んだままということは…。
そっと手を伸ばして黒髪を指で梳く。サラサラと零れる感覚を楽しみながらゆっくりと頭を撫でる。
「…… ……」
「これで満足か?」
挑戦的に言葉を投げると目の前のソイツは気持ちよさそうに赤を細めた。

音の無い言葉
(ぐりーん、かまって)


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発掘してきた多分緑赤処女作。


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