値の無い絵画

2011/09/18 13:05

(盗賊)




きらりと光るそれは暗闇の中ではっきりと僅かな光を湛えて浮かび上がり、陶磁の肌を次々と滑り落ちる。綺麗なオッドアイは暗闇を見つめ、それを送り出しては銀に隠されることを繰り返している。
自分の美的感覚に自信なんてありはしないが、この風景を切り取ったとしたら、万人がこう呟くだろう。

「綺麗だ……」

泣いている人間に向かってなんとサディスティックな台詞かと内心で笑う。俺の恍惚とした呟きに暗闇を捉えていたオッドアイがこちらに視線を移した。
「ばか、」
ぽつりと薄い唇がそれだけ発する。接吻してしまいたい衝動に駆られるが、この絵画を壊す気にはなれない。
そしてイヴェールはまた暗闇を見つめる。
人形のようだ。生きた人形。
ほろほろと服を濡らし床を濡らすそれが止まることはなく、俺もイヴェールも拭わぬまま次々と重力に倣う。
理由もなく涙を流すイヴェールの瞳は、なにを見ているのか。橙に、藍に、暗闇に、黄昏に。
共有することのできない俺の薄色の瞳は、ただただその風景を記憶へ刻む。











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とりあえずここに放置。2000byte超えたら移す。


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