「っ‥やめて、ジローく‥ンっ」



名前を呼ぼうとしたら
途端にそれが愛嬌に変わってしまい。

恥ずかしさの余り、
手で口を塞ぎたくなる。




「キヨって意外と感度良いんだね」




そう言うジローくんは、
俺のものを躊躇いもなく口に含んで。

さっきから執拗に
愛撫を繰り返している。




「ダメ‥っも、出る──‥ッ」

「!‥‥ん」




ゴクリ、と出たものを
飲み下すジローくん。

美味しい筈無いのに。
何で飲むの?




「もうヤだ‥放して…」




自分の後ろ。

背中で腕を拘束している
日吉くんに目を向ける。


机の上に座らされて
腕の自由を奪われてしまっては。

逃げる手立てが見当たらない。




「ヒヨも善くしてあげなよ」




自分の意見なんて
お構いなしで。

笑いながら自身を口に
含むジローくん。


さっきイったばかりなのに。

また反応を見せ始めている
自分が恥ずかしい。




「‥仕方ないですね」




耳元で聞こえた溜め息に。
ぞくりと肩を震わせる。


その返答は
誰に対するものなのか。

聞き返そうとした瞬間。
何かに唇を塞がれた。




「──っ!?」




目を見開く。
心臓が止まる。


何度か経験した
ことのあるそれは。

紛れもないキス。


一瞬の隙をついて
侵入してきた熱いものに驚いて、
咄嗟に舌を引っ込めれば。

深く深く口付けられて。
逃げる舌を絡め捕られる。




「──嫌ッ!」

「っ‥!」




腕の拘束が緩んだ瞬間。

残っていた理性が
日吉くんを突き飛ばす。


床に尻餅を付く日吉くん。

勢いがありすぎた事に驚いて、
慌てて謝ろうとした瞬間。




「‥芥川先輩」




その瞳が。
怪しく影を落とす。


早鐘のように鳴る心臓を
見透かすように。

少しだけ嗤う口元。




「その人、俺にくれませんか」




早めに謝れば良かった。

ゾッと震える脳内で。
そんな事を考えた。







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