閉じられた扉を眺めながら。
ゆっくりと身体を起こす。
「…相変わらず冷たいんだから」
足首まで下げられ
片足に絡まっているズボン。
酷く乱れ、服の意味を
成していないシャツ。
ほぼ裸体に近い状態に。
背中の違和感が混ざり合う。
「‥‥不味」
その違和感を爪で取って
徐に口へ運べば。
口内に苦い味が広がった。
ヒヨはいつだってそう。
どんなに中に出してと言っても。
必ず背中にかけられる。
それは道徳的な抵抗か。
或いは自分を
繋ぎ止める為の鎖か。
どちらにしても
逃げるつもりはないし、
逃がすつもりもない。
「またね、ヒヨ」
弧を描く様に笑った唇は
艶めかしい程美しく。
誰も居ない教室に
響いた声は。
麻薬の様に広がった。
†end
庭球BL