赤、青、緑、黄。
そこにあったのは、絵の具をチューブから出してそのまま塗ったような色の小さな家。
勿論子供用の家なので大人には少々窮屈な大きさなのだが、ご丁寧にドアまで作られていて。
その小さなドアが『さぁ入って』と子供を誘う。
「お、おかあさん…」
握った手をチョンチョンと引っ張り、控えめに私を呼ぶジロー。
見れば大きな瞳がいっぱいに輝き、小さな体がそわそわと動いている。
あぁ。やっぱり誘惑されたか。
予想はしてたけど、まさかこんな過敏に反応するとは。
流石我が子。
自分に似て目敏いな。
「なに?ジロー。あれで遊びたいの?」
「…うんっ」
視線を家から離さず、そのまま首をこくんと動かすジロー。
…ここで駄目だと言ったらどうなるのだろう。
一瞬そんな考えが頭をよぎるが、面倒なことになるのは目に見えているので止めておく。
(目から大量の水を流す。又は超音波攻撃で耳を破壊する等)
「いいよ。行っておいで。でも勝手に他の所に行っちゃ駄目だからね」
「─うん!」
ジローの顔が輝いて、嬉しそうに駆けていく。
最後の言葉をちゃんと聞いたのか不安だけど。
まぁ、途中で疲れたと言って駄々をこねられても困るし。
それに久しぶりにゆっくり買い物を楽しみたい気分だったから丁度良い。
わたわたと靴を脱いでいるジローに、ここに居てよと念を押し。
返事が返ってきたのを確認してから洋服売り場へと歩き出した。
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