木々に囲まれた丘の上。

透き通る風に短い髪を揺らしながら、その少女は空を見上げる。




「あ、いたいた。もぅ、探したよ?」




視線を下げれば、そこには呆れた表情で此方に向かってくるもう一人の少女。

肩まで伸びた髪を靡かせながら、ふぅ、と息を吐く。



「おーどした?」

「どうしたじゃないよ。携帯繋がらないし」

「あはは、ごめん」



神出鬼没も大概にしてよね、と言いながら、スカートを押さえてその隣に腰を下ろす。

どうやら言葉程は怒っていないようで。
笑いながら謝る少女に、優しげな笑みを浮かべた。



「あの子、来てるんだって?」

「うん。あの人浪速のスピードスター並みに走ってった」

「相変わらずだね」



置いていかれたのか、置いていかせたのか。

つまらなそうに口を尖らす少女に笑って、ウェーブのかかった髪を耳に掛ける。



「会いに行かない?」

「えー、メンドクサイ」

「そんなこと言うとまた怒られるよ」

「それはヤだなぁ。でも待ってれば時期あっちから来るでしょ」



──あの人は、強敵だから。


そう付け加えた言葉に、二人で顔を見合わせて笑う。



「何分持つか賭ける?」

「もぅ。ホントに怒られても知らないからね」



くすくすと、転がる鈴のような音色が丘に舞う。

春の風は軽やかに跳ねて。
真っ青な空へと溶けていった。






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