「このまま帰るか?」
「うーん、どうしようかしら」
帰宅する生徒や部活に行く生徒たちに紛れて校庭を歩けば、明らかに違う制服にその存在は浮いて見えて。
道行く生徒の好奇な視線を浴びながら、これからどうするかを考える。
時刻は17時を過ぎた頃。
季節は春を迎え、幸いにも気候は暖かい。
真っ直ぐ帰るにしては少し物寂しい気もするが、だからと言ってどこかに寄るにしても良い案が浮かばない。
「私はブンちゃんと一緒ならどこでも良いわよ。あ、疲れる所はイヤだけど」
「どこでも良いんじゃないのかよ?!」
麻帆の甘いのか甘くないのかよく分からない発言にツッコミを入れつつ、どこかに良い所はないものかと思考を巡らせていると。
ドドドドドド…
遠くの方から、二人の耳に聞きなれない音が聞こえてくる。
──いや。
正確には"普段は"と言った方が正しいのかもしれない。
何故ならば、その音はある人物がこちらに向かって来る時に必ず聞こえてくる音で。そしてその音を発する人物こそが麻帆の敵。
既に学校公認となっている二人の関係に割って入ろうとする、唯一無二のライバル。
「…ブンちゃん」
「…あぁ」
この学校に来れば奴に遭遇する確率も必然的に高くなると覚悟はしていたが、まさか本当に会うことになろうとは。
どんどん近付いて来る音にゴクリと唾を飲み込み、麻帆がその音に身構える。
奴は何処から来るのか。
ブン太の腕をひしりと握り、視線を四方八方へと巡らせる。
──ブンちゃんは、私が守る‥っ
心の中で堅く誓い、さぁ何処からでもかかってこいと短く息を吐けば。足元が、不自然に影を落とす。
嫌な予感がして顔を上げた瞬間。
麻帆の瞳には、太陽に反射する金色が映っていた。
「っっ丸井くーーーんッ!!!!」
「──ッ来やがったわねジロー!!!!」
戦いの火蓋は切って落とされた。
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