「──では、今日の打ち合わせはこれで終わりだ。本格的な準備にはまだ余裕がある。各自好きに時間を使ってくれ」




会議開始から約一時間後。

主に二人の白熱した討論は取り合えず収束を見せ、時間の頃合いを見て跡部が締めの言葉を言う。

解散を告げられた生徒たちは、やれやれと言った風に席を立ち、伸びをしたり欠伸をしたりと疲れた様子で教室を後にする。




「麻帆」




同じ様に大きな欠伸をするブン太に笑いかけながら席を立つ麻帆に、跡部が声を掛ける。

教壇を降りて二・三歩近付いてきた跡部に首を傾げれば、隣に立つブン太を見て鼻で笑った。



「何だよ」

「いや、相変わらずのようだな」



クク、と笑う跡部にブン太が怪訝そうな顔をする。

相変わらずと言うのは麻帆との関係の事だろうか。
意味深な言葉に噛んでいたグリーンアップルのガムを膨らませた。



「元気そうだな」

「跡部もね。少し傲慢さが増したんじゃない?」

「お前程じゃないだろう」



喧嘩腰のようなやり取りでお互いに笑い合う二人の間には、ただの知り合いとは少し違った雰囲気が感じ取られる。


──そういやぁ、麻帆と跡部は従兄妹同士だったけか。


昔本人だか誰かからに聞いた話をぼんやりと思い出しながら、ブン太は邪魔にならないようにと後ろの机に腰を下ろした。



「まったく。お前が立海に行くと聞いたときは驚いたぜ」

「いきなりだったものね」

「意中の王子サマとやらとは上手くいってるようだな」

「当然でしょ」



フン、と息を吐いて、隣に居るブン太の腕を取る。

完全に蚊帳の外に居たブン太は、突然引き戻されて膨らませたガムをパチンと割った。



「俺としては面白くねぇが。まぁ、麻帆が良いなら反対はしない」



ただな、と間を置いてから、目をパチクリさせるブン太をちら見する。




「中坊は中坊らしく、健全な付き合い方をしろよ」




その言葉はどちらに向けられたものなのか。

妙な牽制を入れられたような気がして面白くないブン太は、「へいへい」と適当に返事をして机から降りる。

コイツは麻帆のオヤジかよ、と心の中で突っ込んで、麻帆に帰ろうと促した。



「じゃあまたね、跡部」



ブン太の腕に自分の腕を絡ませたまま、もう片方の手で跡部に別れの挨拶をする。

振った手に応えるように「あぁ」と言った跡部に笑いかけて、そのまま教室を後にした。








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