「学園祭の打ち合わせ?」
「えぇ。真田の代わりに来たの」
ウェーブのかかった髪を肩まで伸ばし、優しい微笑みを浮かべるこの子は三嶋詩史。
柔らかな物腰とその笑顔で周りからの人気は高く、男女問わず慕われている。
因みに氷帝学園男子テニス部のマネージャーであり、大会でもよく顔を会わせているので実際はそれ程久しぶりではなかったり。
「どうせ無理矢理来たんだろ?」
少しオレンジがかった髪をショートに切り、悪戯好きな顔で茶々を入れるこの子は千石悠子。
見目は悪くないが、醸し出すオーラが独特過ぎて周りからは謎な存在として見られている。
因みに会うのは半年振りくらいだろうか。
メールも電話も繋がらず、ずっと音信不通だったので死んだのかと思ってたけど。此処に居ると言うことはどうやら生きていたらしい。
「無理矢理じゃないわよ、失礼ね。ちょっと小言が五月蝿かったから、縛って部室に放り込んだだけよ」
「鬼畜だ!」
「か、可哀想…」
それを無理矢理だと言うんだよと非難する声は、寛大な私が幼なじみのよみしで聞き流してあげることにした。
「あれ?そう言えば丸井先輩は一緒じゃないの?」
「駄犬に盗られたわ」
「あははっ、1分と持たなかったか!」
「貴女の犬でしょ!?ちゃんと躾なさいよ!」
「私、飼った犬に躾はしない主義なんです」
「何その無責任な主義!?」
腹を抱えて笑う悠子に若干の殺意が芽生える。
興味が無いものにはとことん興味が無いという、何とも協調性に欠ける性格を持つジローが、異性に対して唯一懐いているのがこの悠子で。
詩史の話によれば、休み時間や帰宅時間、様々な時間に寄ってきては尻尾を振っているらしい。
「ジロー先輩は、ブンちゃん先輩が大好きだからね」
そう言って笑う懐かれた当の本人も満更ではないらしく。
此方も此方で、神出鬼没な悠子を探すときに何故か居場所が分かるジローを頼りにしたりするので、もしかしたら互いに良い存在なのかもしれない。
彼女公認のBLカップル?という言葉には、流石に蹴りを入れたくなった。
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