「あの車です」
男が指を指した方向。
メインストリートから外れた薄暗い道に、その車は止まっていた。
暗くて色までは分からないが。
所々に改造を施し、いかにも走ると言うよりは、大きな荷物を運ぶのに便利そうな車だった。
「この中にあと二人居るんです」
そう言いながら後ろのハッチバックドアを二回ノックする。
何だろうと思いながら、開かれるドアを見ていると。
「どーもー」
間延びした声と共に、中から人懐っこそうな笑顔の男が現れた。
若そうな顔と、ジーンズにパーカーというラフな格好。
奈倉にはない親近感に、強張っていた肩が少しだけ緩む。
「ど、どうも」
「君がハンドルネームちゃん?思ったより若いんだね」
「…はぁ」
まるで今から合コンでもするかのような口振りに。
どう答えていいか分からず、曖昧な表情を浮かべる。
運転席には小太りの男が座っていて、バックミラー越しに何やら楽しそうに顔をニヤつかせていた。
「誰もいない?」
「あぁ、ちゃんと確認した」
「そう、じゃあ…」
それは何の話かと訊ねようとしたその瞬間──
腕を掴まれ、抵抗する間もなくそのままバンの中へと引きずり込まれた。
→