彼女、人吉瞳にとって、まだ生まれて間もない赤ん坊が、実は成り代わりしててそれでいて中身の年齢が18の高校生であるなんてことは信じられないだろう。
そして私がこんなことを考えていることさえも知らないのだ。
ここで私が普通に喋れていたりしたら、それでこそ異常ではないか。
『私は成り代わりで、本当は人吉善吉が貴女の子供なんですよ』とは言えない。
というか、異常と間違われてどこかの研究所や病院につき出されるのは嫌だ。あ、瞳さんは医局の人だった。さすがに成り代わりと言えど、自分の子供をそう簡単には渡さないだろう。その前に自分で調べるだろうし。
異常じゃないのに異常とは、これいかに。
別の言い方で『特殊』の部類に入るのではなかろうか。
科学の限界を越えて私は来た、けして初音ミクちゃんのようにではなく。
もっと言うなら、次元の壁を越えていつでも会いにゆくルカ姉でもない。
あきらかに、
あきらかに、転生トリップなるものに、私は遭遇してしまった。
これが夢小説のパターンからして行くと、次に出てくるのは『神様』とか『自称:神様』とか、そんなものだろう。
と、思っていた矢先。
「ピンポン、ピンポン!! 大正解! ザッツライ! その通り!」
真っ白い服を着たバカ(たぶん)が現れた。
「おいおい弥善ちゃん。それはないんじゃない? オレっていちおー『神様』なんだけどなー」
そんなバカな神様はゴメンだ。
「だーっ、あうっ、いー」
あ、駄目だわ。喋れなかったんだった。
「必死でかわいいけど、喋れなくて良いよ☆ むしろ、君が考えてた『異常』ってやつに間違われるし。それに、オレは君の心が聞こえるからね。ほら、オレって神様だし?」
人が来たときに困るのは嫌だろう。オレの姿は君にしか見えてないよ。
そう『神様』は続けた。
う……。じゃあなんで私が成り代わりしなきゃいけなかったのかちゃんと説明してくれるんでしょうね? 『か・み・さ・ま』!!
「ああ良いよ☆ 理由は簡単! 明朗にして快活、簡潔にして簡略!!」
さっさと言えよ。バカ(神様)。
「ひどっ!? まぁ良いさ。 それはね、オレがやってみたかったから!! どうどう? ものすごく分かりやすいだろ」
ふざけんなっ!! 何が「やってみたかった」だ!! 私の元の生活をどうしてくれる!?