団子
「……あのさ」
「ふぁんでふぉふぁるは?(何でござるか?)」
「そんなに急いで食べなくても団子は逃げないよ?」
「んっ、……んぐ、そうでござるな!!」
口一杯に頬張っていた団子を喉に詰まらせることなく器用に飲み込んで幸村くんはそう言った。いつも思うけれど、幸村くんの笑顔はきらきらしていて眩しい。日輪ほどではないが。
「まぁ、作った僕としては嬉しいけどね」
「なんと!? この団子を作ったのは白亜殿であったか!! それは忝(かたじけな)い」
「良いよー。元就に大福を作るついでだし」
小さい時、元就に僕の作った大福をあげたことがきっかけで、今では元就にお八つを作る事が日課になった。
「とても美味いでござる。某、佐助にもよく団子を作ってもらうのでござるが、佐助の作る団子と白亜殿の作る団子とでは全く味が違うでござるな」
さっけくんって忍なのに凄いな、というか幸村くんの母親みたいだ。
「さっけくんって何でもできんだねぇ。やっぱりさっけくんの作る方が美味しい?」
ちょっと幸村くんに意地悪を言ってやった。
「あっ、いや、そういう事ではなく。佐助の作る団子は美味なのは確かでござるが、白亜殿の作る団子も格別に美味だという意味で……」
「にゃははは、誉めても何も出ないよ幸村くん。出るのは僕の新作みたらし団子だ」
焦る幸村くんって面白いよね。みたらし団子を幸村くんに差し出すと幸村くんは途端に瞳を輝かせてこちらを見た。
「良いのでござるか?」
なんでだろう、幸村くんに犬耳が生えてるように見える。ちょっと目を擦ってから僕は幸村くんに良いよと伝える。
「ではさっそく「はい待って」 ?」
みたらしに手を伸ばした幸村くんを僕は止める。幸村くんは何故と言わんばかりの顔をしている。その顔もなかなか面白いね。
「お猿さん、いるんでしょ?」
「あれ? バレてたんだ」
天井裏に隠れていたことは最初から知っていたからさっけくんに声をかけた。
「佐助っ!?」
「幸村くんが団子を口一杯に入れてた所からさっけくんは居たよ?」
「気付いてんなら声かけてよ。俺様寂しかったんだから」
今のは絶対に嘘だ。
「ニヤニヤしてる顔を見られたくないんじゃないかと思って」
「まっさかぁー、まぁ旦那に美味って言われたのは嬉しかったケド」
「何そのドや顔。なんか癪に障る」
「当たり前だ、佐助の作る団子が美味なのは当然!!」
「……」
幸村くんの言葉を聞いた途端にさっけくんの顔はニヤニヤしている。気持ち悪い。
「ちょっ!? 気持ち悪いって何」
「文字通り」
「それより白亜殿、某はみたらし団子を食したいでござる」
幸村くんの言葉を聞いたさっけくんの顔の面白い事。
「ちょっと旦那? それよりって酷い」
「食べて良いよー。さっけくんもね」
瞳を輝かせてみたらしを頬張る幸村くん。やれやれ、といった感じでさっけくんもみたらしを口に運んだ。
「あ、茶柱」
今日もほのぼのである。
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