日輪
幼少時
僕がいつもの日輪へのお祈りをしている時だった、泣いている自分の幼なじみの声が聞こえたのは。
幼なじみの名前は松寿丸。僕とは身分が違うけど、それでも幼なじみだ。将来は絶対、松寿が四国や瀬戸内を治めるのを傍で見守るんだ。
泣いている声の方へ向かうと、案の定、松寿が膝に顔を埋めながら泣いていた。
松寿が泣いている大抵の理由は、松寿の兄に何かしら言われた時だ。そんな松寿を見ていると無性に松寿の兄を殺し……げふん、殴りたい衝動に駆られる。
「松寿」
そんな時に僕は松寿の元へと近づき、彼の頭を撫でてやることが多い。そうすると松寿は安心するらしい。
「……白亜」
「何?」
「我はどうすれば白亜のように強くなれる?」
松寿はこぼれる涙を拭いながら(実質、拭いきれていないが)僕にそう言った。
「んー……、あ」
「?」
「松寿、ちょっと来て」
一つ思い付いた僕は松寿の手を引き、僕が先程日輪にお祈りをしていた場所へ連れていく。
「松寿、僕はね、決して自分だけの力で強くなった訳じゃないよ」
「そう……なの?」
じゃあなんで、と松寿が続けるのを僕は遮る
「僕はいつも日輪にお祈りを捧げているんだ」
「……日輪?」
「お祈りを捧げると日輪は応えてくれる。僕に力を与えてくれるんだよ」
だからね、松寿も日輪にお祈りすれば僕みたいに強くなれる。
「キミは日輪の申し子になれるんだよ」
「我も強く……?」
いつの間にか松寿の顔には笑顔が戻っていた。
そして次の日から僕の日課が僕と松寿の日課になったのだった。
こうして、元就は日輪信者になった。
(はぁっ!?)
(姫ちゃんうるさい)
(うるさい姫若子)
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