「ねぇ輝ちゃん」

『なんですか変態川先輩』

「ちょ、酷くない!? 俺の名前は及川だよっ!! 」

『そーですね汚川先輩』

「おしいっ、てか漢字!! その漢字止めて!!」

私がスコアボードの整理をしていると先輩がやって来て話しかけてきた。うざい変態キモいマジ止めろ。と心の中で先輩に対して暴言を吐くぐらい嫌だ。
名前をわざと言わないのはそのせいでもある。

『なんですか一体。私はまだ仕事が残ってんですよ』

「や、ちょっと聞きたいことがあって」

うわ、何この人。何が聞きたいんだろう。もうやだ帰りたい。先輩を、金田一くんか国見くんに押し付けてでも帰りたい。

「これを見てほしいんだけどさ」

そう言って先輩が取り出したのは。

『……プリクラ?』

「そう! この間撮ってきたんだ」

プリクラを見るとキメ顔の先輩とその横で嫌そうに立っている岩泉先輩だった。
私も多分、先輩に誘われたらこんな顔してそうだな、と思う。

『なんで岩泉先輩と』

「いやぁー、『彼女いないからって岩泉先輩となんて』違うよっ!? 彼女くらい居るよ!? 」

『浮気ですか』

彼女とは撮らずに岩泉先輩と撮るとか何考えてるんだこの人。というか男かプリクラとかカップルとかならまだしも。男二人でとか……。

「輝ちゃんってなんか予想の斜め上を行くというかなんというか……。浮気とかそんなんじゃないからね?」

じゃあなんだというのだろうか。

『彼女さんにドタキャンでもされたんですか』

「えっ!? …なっ、何のことかな?」

図星か。

『というかその日の夜に岩泉先輩から愚痴メールが届いたんでおおよそのことは知ってるんですけど』

彼女にデートをドタキャンされた先輩がその日、家でゆっくりしていた岩泉先輩を呼び出してそのまま腹いせに付き合わされたのだ。


「岩ちゃん!? なんてことしてくれたの」

『いや、誰だって腹いせに付き合わされたら愚痴りたくもなりますよ』

私は先輩との会話も岩泉先輩に愚痴りたくなりますけど。

「岩ちゃんも輝ちゃんも俺に酷い扱いなのは気のせいかな」

『嘘泣き止めてください。気持ち悪い』

酷い扱いなのは筆者が先輩のことが好きじゃないからだと思う。

『というか、何が言いたかったんですか先輩』

「うぅ、……輝ちゃんってプリクラ撮ったりするのかな〜って」

『普通にありますけど』

「誰と」

『友達とか』

「ふーん。じゃ、彼氏とは?」

なんかグイグイ来はじめたんだけどこの先輩。怖い。

『先輩に言う必要はないと思いますけど』

「輝ちゃん彼氏いないんじゃない?」

『はぁ……』

ごそごそ

「?」

私はポケットに入れていたスマホを取りだして画面を操作した。それはもちろんあの画像を探すため。
フォルダ画面をスクロールして目当ての画像を見つけると私は先輩の目の前にスマホを突き出す。

『これで満足ですか?』

そうしてスマホをまたポケットに直した私はスコアボードを直しに部室に向かって歩き出した。

「待ってよ輝ちゃん!? え!? 彼氏って飛雄ちゃん? ちょっと!!」


後ろから先輩が何か言ってるけど気にしないでおこう。