『 プリン 』

「 ? 」

『 プリン食べたい 』


じぃー と此方を見ながらそう輝がいった。 若干視線が俺の頭に向いているのはこの際無視しておく。

「 買ってくれば? 」

『 面倒くさい 』


輝の懶(ものぐさ)は今に始まった訳じゃない。 それは彼女の生活にありありと現れている。 動きたがらない輝はそれはもう我が儘なお姫様のようだ。


「 クロに頼めば? 」

俺も人のこと言えないけど。

『 あ、それ良いかも 』

ポンと両の掌を叩いて微笑む輝。 可愛い なんて口に出すのは俺のキャラじゃないから心の中に留めておく。

「 …やっぱ駄目 」

『 えぇ!? 』

クロは絶対輝に怪しい見返りを求めそうだ。 それは是非とも回避したい、 というかしなければいけない。提案した俺が言うのもあれだ 後で泣きを見るのは輝だけど 流石に可哀想だ。

「 クロが意地悪なの 輝は身をもって分かってるでしょ 」

『 ゔっ!? それは… 』


まぁクロが意地悪なのは輝の気を引きたいからだと思うけど。


「 ねぇ …輝 」

『 何? 』


輝が真剣な顔になったのは俺もそんな顔をしているからだ。

「 …俺、輝が食べたい 」

『 ん? ……な、ななななっ!? 研磨がっ、研磨がァァァァァ!? 』

「 冗談に決まってるでしょ 」

『 だっ、だよねーυ
ビックリした 』

さっきの真剣な顔はどこへやら 輝の顔は今や真っ赤である。
俺のさっきの言動を嘘と本気の比率で表すと3:1
実はかなり恥ずかしくて何言ってんだろ俺、みたいな思考に陥る。 表情にでなくて良かったとひとまず安心した。 顔を真っ赤にさせてそんな言動するなんて俺のキャラじゃない。