どうしようもないバレー馬鹿を好きになってしまった 中学生の頃から、私はこいつを好きになっている。
天才的な技術を持った独善的な王様 「コート上の王様」と呼ばれていた頃の彼の行き場のない想いも、私は知っていた。
あの時の彼の事を今でも私は忘れる事ができない。


高校に入って 私は中学でバレー部のマネージャーをしていたこともあり、烏野バレー部のマネージャーを志願した。 もう一つの理由は、彼がバレー部に入部するだろうと思ったからだたった。 烏野に来たのだって不純な動機かもしれないが、「彼」が気になったから。
予想は的中した、彼はバレー部にやってきた。


私は同じクラスになっても、彼と会話をしようとはしなかった。 中学の頃は2、3回程しか話したことが無かったし、彼も私の事を忘れているだろうと思ったから。

―それなのに

「 瀬戸 」


彼は私に話しかけた。
部活中だった。


『 …え? 』

「 ドリンク …くれ 」

練習で汗だくになった彼は喉を潤すためにそう言った。


『 あ!? はい』「 さんきゅ 」


ドリンクを受けとると彼は日向の元へ歩いていく。


『 …びっくりした 』

「 何が? 」

『 だって影山くんが話しかけてくるなんて… 』

「 同じ北一じゃなかった? 」

『 ……って!? 菅さん? 』


いつから居たのか 菅原がそこに居た。

「 俺にもドリンク頂戴 」

『 どうぞ 』


心臓をバクバクさせながら輝はドリンクを差し出す。


「 で、さっきの続きだけど 」

『 聞いてたんですか …今の 』

「 うん 」

先程の呟きを菅原に聞かれていた事を知ると途端に恥ずかしくなる。

『 …私、影山くんとおんなじ北一でした 』


「 うん 」

『 でも 会話した事は2、3回くらいで …会話という程の物じゃなかったんですけど 』

でも私は嬉しくて 影山くんは覚えてないかもしれないけど 本当に嬉しくて さっき名前を呼ばれた時にはもう吃驚したんです。

輝の話に菅原は静かに耳を傾けていた。

「…輝は 影山が本当に好きなんだな 」

『 や、あのっ ……はい 』


「 顔真っ赤だべ 」

『 うわわっ// 』


更に輝の顔が紅潮するのを菅原は微笑ましく見ていた。

「 スガ先輩 練習始まります 」

「 おう 」


影山が菅原を呼びにやってきた。 菅原はドリンクを輝に返して練習に戻っていった。 影山も一緒に戻ると思いきや、影山はそこから動かなかった。
輝は不思議になり口を開く。

『 影山くん …練習行かないの? 』

「 なぁ… 」

『 ? 』

「 俺が瀬戸を好きだって言ったら瀬戸は俺を好きになってくれるか? 」


私は影山くんの言葉を一瞬、理解する事が出来なかった。
でも、私は影山くんの言いたかった事に気付いたから。


『 私、影山くんに好きだって言われる前から好きだったよ 』


私は、そう影山くんに伝えた












2014.06.15加筆修正