アヤト [2/21]
*DIABOLIK LOVERS
夢主の口調が侍風
ユイちゃん視点
「はっ、ざまぁねぇーな。チチナシ」
「ひどいよアヤトくん……」
「アヤト殿、ちょっと待つでござる」
アヤトくんに何故か足を引っかけられた私はその場にぺたんと座り込んでいると侍口調の彼女が現れた。彼女はアヤトくんの友達らしい。
「あ? 何だよ」
「ユイ殿になんて事をするのでござるか!!」
「うっせ」
今にも掴みかかりそうな勢いな彼女を私は止める。
「雪路ちゃん」
「チチナシは黙ってろ」
本当にアヤトくんはひどいと思う。
「ふっふっふ……これを見てもそんな事が言えるでござるかな」
「なっ!? それは……」
「拙者の特製たこ焼でござる」
アヤトくんの目の前に高々と何かが入っているタッパーを見せる雪路ちゃん。中身はアヤトくんの好物であるたこ焼。しかも雪路ちゃんの手作り。
「これが欲しかったら今すぐにユイ殿に謝るでござるよ」
「汚ねーぞ雪路」
「どこがでござるか」
あの俺様アヤトくんにこんな風なことが言えるのは後にも先にも雪路ちゃんくらいだと思う。
「……ッチ。おい」
「え?」
アヤトくんは私に声をかける。
「…………悪かった」
あのアヤトくんが謝った。
「おい、チチナシに謝ってやったんだからさっさと寄越せ」
やっぱりアヤトくんはひどい。
「寄越せ? アヤト殿、正しくは『私に雪路さんの特製たこ焼を下さい』でござろう」
「うるせー」
雪路ちゃんが口答えしてもアヤトくんは絶対に怒ったりしない。そこがちょっと不思議だったりする。
「ではこの拙者特製たこ焼はシュウ殿に差し上げるとするでござるか」
「何でアイツのこと知ってんだよ」
「秘密でござる」
「シュウさんと知り合いなの?」
「音楽室に忘れ物を取りに行った時に午睡をしていたシュウ殿と会ってそれから知り合ったでござる」
あれ? 秘密って言ってたのに私には教えてくれるんだ。
「……お、」
「お?」
「俺様にお前の作ったたこ焼を食わせろ!!」
「上から目線でござるな。しかも心が込もってないでござる」
ちゃんと言えないとおあずけでござるよ、と雪路ちゃんは言う。雪路ちゃんは何気に隠れドSだと私は思う。
「だぁーっ、もう……
おっ、俺に…おま……雪路、さん……の特製たこ焼を……下さいっ!! 」
恥ずかしさで顔を赤くしてプルプル震えながらそう言ったアヤトくんが不覚にも可愛いと思ってしまった。
「やればできるじゃないでござるか」
満足した様子の雪路ちゃんはアヤトくんの頭を撫で……ん? アヤトくんが頭を撫でられてる。不思議な光景を目の当たりにしてしまった。しかもアヤトくんはなんか嬉しそうだ。
「では、これはアヤト殿にあげるでござる」
雪路ちゃんはアヤトくんにたこ焼の入っているタッパーを渡した。
やっぱり雪路ちゃんは不思議な子だ。
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