◇A 春市成り代わり [6/12]
※野球に詳しくないので注意。原作も持ってません。ダイヤのAの夢小説知識しかないです。
御春
「それじゃあ"ボール"になっちゃうよ、栄純くん」
バッターボックスに立ってそう呟いたのは、あの亮さんの弟である小湊春市だった。バットを構えている小湊は、いつもさらしていない目を見せていた。
なんだコイツは、と思った。キャッチャーである俺がいるのにも関わらずに、小湊はボールになると言い放った。マウンドの沢村には聞こえていない。
沢村はモーションに入って球を投げた。
投げる前から宣言したのだから、そんなことはないだろうと思った。けど、沢村の球はムービングボール。どこで動きを変えるか予測がつかない。
バシッ、とミットに球が入る。ど真ん中、ではなく、だいぶ反れて。
間違いなく『ボール』だ。
「栄純くんっ!! もうちょっと手首を意識してみて」
大きな声でマウンドにいる沢村に向かって言う小湊は、まるでキャッチャーをしてきた奴の言葉みたいで……、あ? "キャッチャー"?
そうだ、キャッチャーじゃねぇと分かんねぇはずの視点でこいつは球を見てる。どういうことだ。
「おうっ!! ってオイッ、御幸一也、ボール返せーっ」
「お前な、俺が先輩だってこと忘れんな」
沢村に球を返しながらぼやく俺。
小湊春市、お前は一体何者だ。
俺がそう思っていると、小湊は口を開いた。
「俺は、ただの小湊春市ですよ? 先輩」
口元を歪めて笑う姿は亮さんにそっくりだった。ただ、顔を赤らめて言うのは……反則だと思う。
亮(御幸、お仕置きだね)
(((怖っ!?)))
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