桜と [8/9]

「ここは……」

「はて、どうやら何処ぞの本丸とやらに来てしまったようだな」

いつものように散歩をしていた二人。
雪路の問いに三日月は答えた。


「……この桜、どこかで」

「雪路?」

本丸の出入口近くの大きな桜の木に雪路が近づく。そのとき、ザワリと風が吹き、桜の花びらが舞う。

「宗近さん」

「いやはや、これは一体」

「宗近さん」

三日月は驚きの表情をしていたが、雪路の雰囲気が違うことに気付くと、彼女をまっすぐに見た。

「私、思い出した気がします。……私は審神者で、……この本丸にいて。……突然やってきた審神者見習いと名乗った女の子に本丸を乗っ取られて。……ほとんどの刀剣たちが私を主と見ずにあの女の子が主だって。それから私は」

「もう良い。……雪路、お主は」

「私は……もう、『死んでた』んですね」


彼女の目の前にある桜の木の根本にある洞には、彼女そっくりの人物が事切れた状態でそこにいた。




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