まだ [4/9]
雪路は、自分の名以外全てを忘れているらしかった。なにもかも分からない状態の彼女を放っておけるはずもなく、俺は雪路と共にいることになった。
「雪路、このじじいの散歩に付き合ってくれぬか?」
「そんな、宗近さんはじじいなんかじゃ」
「はっはっは。これでも雪路よりかは数倍も長生きでな」
「そうなんですか……?」
「うむ。で、散歩に付き合ってくれるのか?」
「はい。私には帰る場所もそれ以外も分かりませんから」
後で知ったのだが、俺の散歩は徘徊と呼ばれるらしい。それはまあ置いといて、俺は雪路と数日過ごした。
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