ルキ [9/21]
ルキと侍口調夢主 (後からシュウ)
俺がその女と初めて出会ったのは学校の図書室だ。
その日は、借りたい本があった為にその本棚へ行ったのだが、そこにはぽっかりと一冊分の空間があるだけだった。どうやら借りられていたようだ。そう思っていると、後ろから声がした。
「探しているのはこの本でござるか?」
俺は今、何時代にいるんだ。と考えてしまうくらいにその女の口調はおかしかった。
「……そのようだな」
「申し訳ない、拙者が借りていたのでござる」
そう言ってにこやかに本を渡してきた。一人称までもおかしい女だった。
「……殿」
「……」
「ルキ殿」
「? あぁ、すまない」
初めて会ったときのことを思い出していた。と俺は女に、……雪路に言った。
「そう言えば図書室(ここ)でごさったな、ルキ殿と会ったのは」
あのときと同じように笑う雪路。
「お前に話しかけられた時は、何時代かと思ったぞ」
「それはすまないでござった。これは拙者の元々の口調ゆえ」
そう、この女の口調は作っているのではなく、素の口調だったのだ。それを知った時は柄にもなく本当に驚いた。
「もう慣れたがな」
「そうでござるか」
俺は最近、この女といる空間が心地よく感じる。何故だか分からないが。
しかし、それを壊すのが逆巻の長男である。
「なんでそいつと居るわけ?」
「シュウ殿、出会う度に抱擁するのは如何なものかと思うでござるよ」
俺と会話していた雪路の後ろから抱きついたシュウは首筋に顔を近づけた。
「ん……、本当にアンタって良い匂いだな」
「ちょっ!? 破廉恥でござるシュウ殿!!」
俺がいることも忘れて随分とやってくれるな、逆巻シュウ。
「おい、雪路から離れろ」
「は? こいつは俺のなんだからお前に関係ないだろ」
「拙者がいつシュウ殿のものになったのでござるかっ!?」
「今でしょ」
「「古い」」
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