カナト [7/21]
「……」
私はメロンパンを無言で咀嚼している。
「……」
だが、食べずらい。 何故かというと……
「……いつまでそうしてんのさ、カナト」
そう。カナトが後ろから私を抱きしめるように拘束していたからだ。
「うるさいです」
「あー、はいはい。甘えん坊ですねー」
時々こうして、カナトは私を抱きしめる。 私が勉強をしてようと、食事をしていようと、読書をしていようとお構い無しだ。
「……雪路」
「何」
「貴女はどこにも行きませんよね?」
私の肩に顔を埋めながらカナトがそう言う。
いつもカナトが私を抱きしめるときに言う言葉だ。
「カナトは心配性だね。安心しなよ、私はどこにも行かない。カナトの側にいるよ」
メロンパン片手に言うセリフじゃないけど。
「離れていったら許しませんから」
その時は覚悟してくださいね。と言いながらカナトは私をぎゅうっと更に抱きしめた。
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