シュウ [6/21]
私が歩いていた時に、それは起こった。

美術部に所属していた私は、スケッチブックを抱えて、美術室に向かおうと三階へ上がる階段の方に曲がった。そこまでは良かった。だが、私は曲がった瞬間に誰かにぶつかってしまったのだ。
抱えていたスケッチブックは挟んでいた紙をばらまきながら廊下に落ちる。私はその場に尻餅をつく。それは相手も同じだった。
金髪に青い瞳、白い肌。外人顔負けの美貌。名前は知らないが、この前私がスケッチのモデルに勝手にしていた人だ。
呆けていると、彼は手元にあった一枚のスケッチを拾った。
見られては駄目だったと思い、静止しようとする前に、彼は口を開いた。

「これ、……俺」

そう、私はスケッチブックに彼の絵を挟んだままだったのだ。

「あっ、その、えっと……。ごめんなさいっ!!」

「は?」

「実はこの間スケッチするものを探していて音楽室で眠っていた貴方があまりにも綺麗だったので描いてしまいましたあやまりますごめんなさい破り捨てるなり燃やすなりなんなりしてくれてかまいませんのでゆるしてください」

私は一息でそう言った。ちょっと苦しいかもしれない。ただでさえ体が弱いのに。
そう思っていると彼が言う。

「アンタ、早すぎて何言ってるか分かんないんだけど」

「……すいません」

ですよね。あんなに捲し立てるように言ったら分かりませんよね。

「……別にいいけど。というかこの前の変な視線はアンタだったんだな」

彼の顔が見れなくなって私は下を向いた。

「本当にすみませんでした」

「さっきからそればっかり言ってる」

その通りだ。

「すいません」

「ほら」

「う……」

「アンタ、面白いな」

「へ?」

彼の言葉に反応して、私は顔を上げた。
彼は笑っていた。すぐにでもスケッチしたいくらいに綺麗だった。



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