虎猫

『 ここで話すのもなんだから、中でお茶でもしよう。久しぶりのお客人だから、あんまり良い持て成しはできないけど 』

「 ヒヒッ 良い、ヨイ 急に参ったのは此方の方よ 」

『 白戀(はくれん)がまた我儘をしたみたいだ 』

白戀と呼ばれた猫は一鳴きした。 鳴いたのは刑部と三成を先導してきたあの白猫だった。



「 貴様はこの猫共に全て名を付けているのか? 」


『 いいや、名があるのはこの屋敷で飼っている猫達だけだ。後のは野良猫だったり近くの飼い猫だったりだよ 』

此処に来る時に塀の上にいた猫達を見ただろう? あれがそうだよ。

そう言うと纏は屋敷の中へと歩を進めた。
それに続けて大谷もふよふよとついてゆく。
しばらくその場から動こうとせずにいる三成に


『 そんな所にいると猫達に埋る恐れがあるから気を付けて 』


纏はそう言った。


「 なっ!? 猫に……埋る? だと!? 」


『 治部殿がそれでも良いというのなら構わないけれど 』
「 ヒヒッ凶王が猫に埋るとな? これは愉快、ユカイ 」

「 刑部!? 」

「 冗談よ 冗談 」

ヒヒッとまた笑う刑部は冗談を言っているようには思えなかった。


『 仲の良い友垣がいるというのは良いものだね 』

ねぇ、と纏は側にいた虎猫に呟いた時、その猫は少し寂しげに鳴いた。





2014.06.15加筆修正


prev next





「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -