野洲猫
雉猫は三成の顔に飛び付いたままだ。

『 紀丞(きすけ)っ!! 』

屋敷の中から誰かを叱るような声が聞こえてきた。
しかし、紀丞とは誰の事を指すのか皆目検討がつかない。
三成の顔に飛び付いていた猫は直ぐに離れた。まるで、呼ばれたその声に反応しているようだった。

「 ヒヒッ 紀丞よ、また悪さばかりしておるようだな 」

三成は刑部のその言葉で紀丞とは誰の事を指すのか合点がいった。

「 いきなり何なのだこれはっ!! 」


『 大丈夫か? 』

「 …大丈夫な訳があるかぁぁぁぁぁぁっ!!! 何なのだ一体!? いきなり人の顔に飛びかかってくるなど。……秀吉様、この者を斬滅する許可を 」

聞こえてきた言葉に怒鳴りながら答える三成。

『 斬滅は困るなぁ。こいつらの世話が出来なくなる 』

「 心配せずともよい纏、 何時もの事よ 」

『 来訪者は刑部殿達だったのだな 』

猫達が騒がしいから不審者だと思っていたよ。

と、纏と呼ばれた人物は応えた。


「誰だ貴様は 」
『 私は橘纏 この屋敷の主だ。最近ではこの屋敷は猫屋敷と呼ばれているらしい 』

中性的な顔立ちをしており、髪は艶々とした黒髪、性別は口振りからして男だろうか。

「 猫屋敷の猫武将と其奴は呼ばれている 」


いつの間にか、纏の周りには猫達が集まって来ていた。 最初に会ったあの白猫や刑部の膝に乗っていた三毛猫もいた。そして、三成の顔に飛びかかってきた紀丞という名の雉猫も足元に座っていた。
纏はというと腕の中にまだ幼い野洲猫を抱いていた。








2014.06.15加筆修正


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