*黒猫視点






「……猿飛……佐助」

「そ、せーかい」


黒猫は、この猿飛佐助が嫌いだった。
飄々として、軽い雰囲気を出しているが実力はかなりのものであるから嫌みが更に増す。そういえば、此処は武田の領地内だったということを失念していた。まだまだ未熟、主の元へ急ぐことだけを考えていた。反省しなければ、と黒猫は思うのだった。


「……急いでいる、お前に用は無い」

「アンタに無くても俺様的には用があるんだケド」

「領地に入りはしたが、武田には危害を加えてなどいない」


イラつきながら答える黒猫は、正に威嚇する猫そのものだった。



「武田には? ……ってことは他の所では何かしてきたって事?」


「……」

「あれ〜? 図星かな」

「……うるさい、今はお前に構っている暇など無い」


黒猫は腰に下げていた忍刀に手を掛けて更に威嚇する。しかし、対する佐助はさも気にしていないかのように振る舞う。


「そんな可愛い顔で睨んだって怖くないんだケド」

「……」

黒猫の苛立ちは最高潮に達する前だった。

「忍が簡単に感情を表に出したら駄目でしょうが」

アンタそれでも忍? そう佐助が続けると黒猫は眉根をピクリと動かす。

「っ!?……うるさいっ」

忍刀を抜き、黒猫は佐助に迫る。

「あーらら、怒っちゃった?」


やはりこいつは苦手だ。迫ってきた黒猫を、まるで余裕だといわんばかりにヒョイと避ける佐助に対する苛立ちが募るばかりだった。








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