纏の言葉に固まった三成を左近は少し足を引きずりながら屋敷の中へと移動させる。
『 治部殿は本当に 猫に埋まるのが好きなのか 』
「 いや 違うだろ 絶対 」
三成の細身で軽い身体を大事そうに抱える左近は、やはり部下といった所だと纏は思う。
『 いきなり固まるのはどうかと思うけれどね 』
「 すまない 」
『 いや、いいよ 』
最近思うのだが、この屋敷への来客が多くなってきた気がする。
一人でいる事が多かったせいか、人とふれ合う機会が少なかった (猫とふれ合う機会と時々、刑部殿とお茶をする機会くらいならいくらでもあるが)
今、その事を思うと 我ながら寂しい奴だったと苦笑してしまう。
「 纏 」
左近が不意に私の名前を呼んだ。
『 どうした? 』
「 寂しい奴 とか考えてるだろ 」
『 左近にしては勘が鋭いな 』
「 俺にしてはってなんだ、してはって 」
左近は時々、言ってはいけないけれど、変な所で妙に勘が鋭い
のだ。
苦笑が微笑みに変わった気がした。
そして自分自身も何かが変わった気がした。
「 大丈夫かよ 三成様 」
そう言って 屋敷の中の部屋に座らせた三成の目の前で掌を左右に動かした。
『 水を持ってくる、 後は濡れ布巾だな 』
「 ああ、頼む 」
三成を畳の上へと横たわらせた左近を確認すると炊事場へと纏は向かうのだった。
2014.06.15加筆修正
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