にー、 にー

『 紀丞? 』

「 どーしたんだ? 」

雉猫の紀丞(きすけ)が何かを訴えるように鳴いたのを纏は不審がる。

『 ……来客か、 それとも間者か 』

「 此処に来るなんて、物好きもいるもんだな 」

『 お前もその中に含まれていると思うが 』

こんな猫だらけの屋敷。
誰が好き好んで訪れるというのだろうか。

まぁ刑部殿とは親交があるし、刑部殿の気に入りの猫もいたので時々はこの屋敷に訪れている。


訪問者を確かめる為に縁側に座っていた纏は立ち上がり屋敷の門へと向かう。
左近も同様にして立ち上がり纏について行く事にした。


『 別について来なくても…… 』

「 一応 どんな奴か気になるからな 」


はぁ、 とため息を一つ彼女は溢した。


何かを訴えるように鳴いていた紀丞は先に門の方へと走り出していた。




玉砂利の敷かれた地面はザリッザリッ と踏まれる度に音をあげる。

門の前に来ると纏は一度立ち止まって、間を空けてから門を開けた。
途端に紀丞が跳躍し、門の隙間から門外に居たであろう訪問者へと飛び着いたのだった。







2014.06.15加筆修正




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