太閤殿の居る部屋を退室し私は再び軍師殿に案内をされながら歩いていた。
周りの景色を見ながら思うのは、やはりこの大坂城は広いということだ。 初めてこの城に登城した際には、恐れながら天守閣に登ってみたいと口走ってしまい、軍師殿にそれはもう笑われてしまった。 そして太閤殿は別に構わないと言ってくださり、私は天守閣に登ることができた。 広くを見渡せるこの場所は息を呑む様な景色だったことを今でも覚えている。
「 纏くん 」
『 ……? はい 』
「 いつも思うのだけど 君は年頃の女の子なんだし、もう少し着飾っても良いと思うんだよ 」
『 そうですか? 』
軍師殿の言葉に私はそう答えた。
ちなみに私の今の服装はと言うと簡素な作りの着物に袴姿。そしてとにかく地味である。
いつもの格好は藍色や黒の甚平だ。
幼い頃はあんなに憧れていた女物の着物に今では無頓着になっている。
動き回るのに女物の着物だと窮屈で動きにくい、それに比べて男物の着物は動きやすいし楽だ。
「 君がそのままでも良いなら構わないよでも僕としては君の女の子らしい姿も見たいな 」
軍師殿はきらきらと効果音をつけながら微笑んだのだった。
すこしゾクリと感じたのは何故だろうか。
『 ……考えておきます 』
「 そうかい!? 」
回答として驚きの発言だったのか軍師殿は目を見開いた。
『 あまり期待はしないで下さいよ 』
絶対引きますから。
「 楽しみにしておくよ 」
ふふ……、と軍師殿の綺麗な顔が、微笑むことで更に美しくなる。
軍師殿はまさに佳人と言ったところだろうと私は思うのだった。
2014.06.15加筆修正
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