襖を開けた竹中は上座に座っている太閤に呼び掛ける。
「 秀吉、 良いかい? 」
太閤は無言で首を縦に振る。
そして竹中が纏に入るように指示する。
『 只今参上致しました。 橘纏にございます 』
そう言って頭を下げる。
「 顔を上げよ 」
『 はい 』
太閤は纏に顔を上げさせ纏を真っ直ぐに見た。
「 じゃあ 僕たちが纏くんを呼び立てた用件について話をするよ 」
良いね 秀吉。
竹中が言うと、「うむ……」と太閤は頷く。
「 実はね、君に頼みたい事があるんだ 」
『 頼みたい事… ですか? 』
「 うん。 それで頼みたい事って言うのが
最近、謀反を企てようとする輩が多くてね。 君にその輩を調べてもらいたいんだ 」
『 それは ……早い方が宜しいですか? 』
「 そうだね。 その方が僕と秀吉は助かる 不穏分子は早めに潰しておきたいからね 」
『 左様で。 ……失礼致します 』
黒猫 と纏は呟くと黒装束をまとったくの一が現れた。
気配一つしなかったことには並々ではない事が分かる。
『 話は聞いていたな では行け 』
「 ……御意に 」
顔色一つ変えずに頷くと黒猫は消えた。
「 すまないね 」
『 いえ 主君に仕えるのは家臣の勤め なんともございません 』
太閤殿や軍師殿には私の方が世話になっているようなものです。 私をこの豊臣の、太閤殿の家臣にして頂いたことは恭悦至極に御座います。
纏はそう言って微笑んだ。
「 纏 」
『 はい 』
「 宜しく頼む 」
『 太閤殿の仰せのままに 』
また恭しく頭を下げたのだった。
2014.06.15加筆修正
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