水羊羹を平らげた三成は先程思っていた事を聞くことにした。
「 此処に猫共は居ないのか? 」
『 此処には来ないようにしてあるからね 安心して良い 』
それとも、猫に埋もれたかったのかい?
と纏は冗談を言った。
ひとまずそこで三成は警戒するのを止めた。
あの猫共が居ないのならば安心だ。この屋敷の主は苦手だが。
「 纏 」
『 如何した刑部殿 』
「 灰瀧(はいろう)は息災か? 」
『 …あぁ 灰瀧はこの間、天寿を全うしたよ 』
眠っているかのように安らかな死に顔だった と纏は言った。
「 …そうか あやつは死んだか 」
「 灰瀧とは誰の事だ? 」
『 灰瀧は刑部殿のお気に入りで 灰色の病気で足の不自由だった老猫のことだよ 』
「 物静で良い猫だった。 あれが我の一番の気に入りであったのよ 」
もしかしたら刑部はその灰瀧と自分を重ねていたのだろうか。
「 墓は何処に? 」
『 屋敷の裏にある 猫達も時々、彼処へ行っているようだ 』
慕われていたんだよ、灰瀧は。
嬉しいだろうね 会いにきてくれる者がいて 寂しくはないのだから。
「 後で我も参るとするか 」
『 そうしてくれると、灰瀧も喜ぶ。有難う、刑部殿 』
そうして纏はまた微笑んだ。
2014.06.15加筆修正
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