所変わって現在、三成と刑部は屋敷の中に入り、通された部屋にいた。藺草の香りがほんのりとする畳の間だった。
纏は茶を出すと、少しの間だけ部屋から出ていった。会話のない静かなその場は、刑部の啜る茶の音が聞こえるだけだ。

「 そんなに気にせずとも良い、屋敷の中にはあまり猫は来ぬ 」

屋敷の中まで猫だらけなのでは、と警戒しているとそれを察したのか刑部はそういった。

「 そうなのか? 」

「 我は見たことがない故、な 」

話をしていると襖の開く音がした。

『 いや、すまないね。茶菓子はこれぐらいしか出せなくて 』

そう言って纏はお盆にのせた水羊羹を二人の前に出した。

『 自分で作ったものだからあまりお客人に出せる物ではないけど 』

「 自分で……? 」

三成は目の前にある水羊羹を見てそう言った。あまり甘い物を食べることはしないのでそういったものは見たことがなかったが、店に出しても平気なくらいの出来なのではと思ったくらいだ。
刑部に至っては特に気にする事もなく水羊羹を食べてしまった。

『 ? 治部殿は甘味は苦手だったか 』

水羊羹に手を出さない三成に纏はすまなさそうにそう聞いた、それに刑部が答える。


「 此奴はあまり食に興味が無い故な 」

差し詰め見たことが無いのよ。

『 ははっ そうか 』

纏は少し微笑んだ。


「 …頂く 」

刑部が口にしたのに自分は口にしないというのは如何なものか 三成は水羊羹を頂く事にした。








2014.06.15加筆修正


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