「 これ 」

私は鈴を取り出して夏目くんに見せた。
チリーンと綺麗な音が鳴る。

この鈴は魔除けだったのか。
これまでのことも それなら頷ける。 夢のことも 妖から逃げるときのことも。


「 これは 誰かにもらったものなのか? 」

「 うん …誰かは忘れてしまったんだけど 」

何の変哲もない小さな鈴が まさかそんな大層なものだったとは知らなかった。
これをくれた人は、何故私に与えたのだろうか。 まるで私が見えていることを知っていたかのように思える。


「 まぁ そんなのは 今は良い それより 」




私は腹がへった





ニャンコはそう言った。
今までしていた話とかけ離れたことを言うものだから。
私は吹き出してしまった。

「 ぷっ 」

「 先生… υ 」

「 何だ? 腹が空いたと言っただけだぞ 」

夏目くんはニャンコに非難の目 というか呆れた目を向ける。
「 シリアスな話をしていたのに 」


「 あはははは 」

「虹榮?! 」

私は堪らずに笑って それを見た夏目くんは驚いていた。
私も驚いた。 誰かとこうやって話をしたり、笑ったりするのは久しぶりだ。

「 あはははは
…ふぅ ごめんね 笑っちゃった 」

「 いや 」

いいんだ と夏目くんは微笑んでくれた。

「 調理実習で作ったクッキーがあるけど 食べる? 」

「 食うっ!! 」

ニャンコは即答した。
それにまた呆れる夏目くん。

それから私はクッキーを渡した。 すまなさそうにしている夏目くんに 味見でいくつか食べたから大丈夫だ、と私は言った。

「 ありがとう虹榮
話せて良かった 」

「 私も 夏目くんと話せて良かったよ 」

「 何か困ってたら、おれに話してくれ 」

その時は 力になってやれるかもしれない。

夏目くんはそう言ってニャンコを抱っこすると「 じゃあ またな 」と帰っていった。

「 うん、またね 」




嬉しかった
ただ嬉しかった。

私だけじゃ無かった
見えているのが夏目くんも同じだったことが。


本当に嬉しかった。





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