「さわんな」「ちょっと兄さん可愛いすぎ」
ぐでたま(の、ぬいぐるみ)になってしまった兄さんを元に戻す方法を見つけなきゃならない。いや、そもそもなんで兄さんがぐでたまになってしまったんだ。似てるな、とは思ってたけどまさか本当に兄さんがぐでたまになってしまうとは……。
とにかく、俺はレイジに聞いてみることにした。兄さんに待っているように言うと、兄さんは
「一緒に連れていけ」
と、あの脱力感のある顔で言ってきた。
このままでも良いんじゃねぇか……? 可愛いし。……いやいやいやいや、兄さんを元に戻さねぇと。
動けそうにない兄さんを腕に抱えて部屋を出た。他のやつらに見られたらおしまいだ。とくに三つ子。からかってくるに違いない。端から見れば俺がぬいぐるみを抱きしめて歩いている様にしか見えないからだ。
「兄さ、」
「スバルちゃん?」
「っ!? ユイか」
兄さんに話かけようとすると、後ろから名前を呼ぶユイがいた。
「どうしたの? ……えと、そのぬいぐるみ」
「あ、……これは。なっ、なんでもねぇ。つーか、ちゃん付け止めろ。スバルで良いって言っただろ」
三つ子じゃないだけマシか。
「でも、」
「まあ良い……、ユイ」
「?」
「これ、落ちてた」
ポケットからユイが落としていた手鏡を取り出して渡した。
「あっ、無くしたかと思ってた。ありがとう」
なんだろう。ユイが笑うと回りに花が咲いたように見える。
つまり可愛い。
「じゃあ」
「まっ、待って!!」
「は?」
歩き出そうとすると、ユイが引き留めるから俺は振り向いた。
「そのぬいぐるみ可愛い……ね。」
まぁ、可愛い……よな。だけど、このぐでたまは兄さんだけどな。
「そ、そうだな」
「えっと、触っても良い?」
ユイがおそるおそる手を出してぬいぐるみ(兄さん)を撫でようとする。
すると、
「さわんな」
兄さんが口を開いて、小さな手?でピシッと払った。いや、ピシッじゃねぇか。ぬいぐるみだし。
「えっ!?」
ユイの目が点になっている。
「兄さん……」
「スバルちゃん、そ、……そのぬいぐるみって、まさか」
ぐでしゅうです。
そのあと、取り敢えずユイも連れてレイジの所に行くことにしたのだった。