俺が小森さんとテラスで少し話をしていると、足音が聞こえてきた。そしてその人物はテラスにやって来た。
「おい、チチナシっ!!」
「アヤトくん?」
双子の兄のアヤトはどうやら小森さんを探していたらしい。
「テメェ、こんなとこに……!?」
「久しぶり、アヤト」
そうそう、その驚いた顔が見たかったんだよ。
「なっ!? ユキト?」
間抜け顔をしたアヤトは何度も俺を見た。
「はは、……俺のこと忘れた?」
「なわけねーだろ!! 俺様がユキトを忘れるなんてこと」
そうだよね。アヤトは俺を忘れたりなんかしない。
「お前から連絡こねぇと思ったら、こう言うことかよ」
「驚かせてやろうと思って、さ。」
「んで? チチナシの血は飲んだのかよ」
「ちょっと!? アヤトくん、私のことそんな風に呼ばないで」
アヤトがさっきから言ってる『チチナシ』って小森さんのことか。確かに無いね。
「あ? いつから俺様に口答えできるようになったんだよ、チチナシ」
「いいや、飲んでない。それと、いくら小森さんが貧相だからってその言い方はないよ」
あの女の血が混ざったものなんて飲めたもんじゃないから。何も知らないアヤトや他の兄弟はもう飲んでしまった後だろうな。あの女の心臓が小森さんに移植されてるなんてアヤトが知ったらどうなるんだろう。ああ、でも今は。
「そろそろ、気づかれる前にライトとカナトを驚かせてくる」
他の兄弟達をどうやって驚かすかについて考えてるからどうでも良いかな。
そう言ってテラスを後にした。
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