見上げる三日月は金色の光りを放って俺に降り注ぐ。月は良い。それも三日月が一番好きだ。ヴァンパイアなら満月だとスバル辺りに小さい頃言われたような気がする。それでも俺はその月が好きだった。今にも消えそうで、まるで俺みたいだから。
英国校から転校してきたのには訳がある。もちろん父さんに言われたのもあるけど、俺にはすべきことがあったから。
俺を『居ない存在』だと言ったあの女の心臓の行方がやっと分かったんだ。まったく、叔父のせいでこれまで見つからなかったから苦労したよ。まさか逆巻(ここ)の花嫁として連れてこられている女の子に移植されていたなんて。
俺は女の子が苦手、というか嫌いなんだよね。だから吸血する時以外は近づいたりしないんだけど、今回は仕方がない。それに、父さんの計画もあるし。俺は父さんの為ならなんだってしてあげたいんだ。あの女と違って俺は父さんに愛されてるんだから。こんなことあの女に言ったらどんな顔をするかな。ああ、多分顔を歪めて悔しがるに違いない。
「……綺麗」
「誰?」
気配に気づいてはいたけど、まさかそんなことを言われるなんて。
振り向くと、そこにはあの女の心臓を持った女の子がいた。
「あの、私。ここでお世話になって」
「小森ユイ……さん。だっけ?」
「え?」
「一応、話は聞いてた。それに、…………何でもない」
あの女の心臓が目の前で、違う体の中で鼓動している。
小森さんは俺は見て不思議そうな顔をしていた。多分、この容姿についてだと思う。あ、言っておくけど、俺は別にナルシストじゃないよ?
「俺は逆巻ユキト。小森さんが思ってるように俺はアヤトと双子」
そして逆巻家の四つ子の次男。
カナトやライトとは生まれた日が違うのに、アヤトと俺だけ同じ日に生まれた。双子で四つ子なんて面白いよね。
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