シュウ成り代わり2
「ねぇ、……何の真似なわけ」
「……」
俺の前には金糸の髪に碧色の目。逆巻の長女である逆巻ユリアがいる。
俺の体勢はいわゆる「壁ドン」というものだ。彼女の顔の横には俺の両手。逃げられないようにしている。
彼女の表情はそれはもう不機嫌だった。それもそうだ、何せ彼女が家畜と一緒にいる所を邪魔した上に強引に連れ出して今の状況なのだから。
「……はぁ。めんどくさ」
「どうすれば家畜以上に見てもらえる?」
一体どうすれば家畜ではなく俺を見てくれるのだ。そう思った俺は彼女にそう言った。
「は? ……アンタ、何言ってる」
「答えろ」
意味が分からないという風な顔をした彼女に答えを迫る。
「とりあえず離れろよ、顔近い」
その言葉で自分が限りなく彼女に至近距離だったことに気付いた。だが、あえて離さなかった。彼女がどう反応するのかに興味があったからだ。
「……不能にして良いわけ」
女にしては低い声でそう言った彼女の目は本気だった。それは勘弁してほしい。彼女のほうが一枚上手だった。彼女の顔の横に置いていた両手を退かし、彼女から離れる。
「あと一つ言うけど、ユイは家畜じゃない。私の抱き枕だ」
それも如何なものだろうか。俺が言えたことでもないが。
「俺は、先程の答えを聞きたいんだが」
「無理。てか何でそんなこと聞いてくるわけ?」
な、んだと……!? ピシリと何かに亀裂が入った音が俺の頭の中で聞こえた。
「めんどいな……。あぁ、これは私の見解だけどアンタさ、」
私に惚れてんの? と、彼女は続ける。
「違う」
「嘘」
「断じて違うっ! 俺はお前が好きだ……!?」
「ふーん」
やってしまった。認めたくないはずなのに彼女に「好きだ」と言ってしまうとは。 顔を反らしてしまった自分はなんて情けないのか。
「ま、アンタが体温あって暖かいなら考えてやったんだけど」
それは無理な話だ。今日ほどヴァンパイアになったことを後悔してしまう日はないだろう。
「……そう、か」
「どうしてもって言うならユーマの次くらいでなら良いけど」
この女は俺の心を何だと思ってるんだ。
「ユイには負けるけどな」
良いだろう。お前がその気なら、俺が本気を出せば良いだけだろう。せいぜい覚悟しておけ、逆巻ユリア。絶対にお前をものにしてみせるからな。
@@あとがき@@
シュウ成り代わりに迫るルキ。タイトルを付けるとしたら「無神ルキの暴走」いかがでしたでしょうか。書いている途中でルキのキャラがぼろぼろに崩壊していってこの有り様です。
迫るといったら「壁ドン」だろうと考えるとこうなったんです。成り代わり主は一応「不能にして良いわけ」と言ってますが、これが本家シュウだったら無言でルキを不能にしていたはず(私的見解)。
成り代わり主の中での順位は
ユイ→ユーマ→ルキです。
兄弟の中ではアヤトやスバルが上位という……。
参謀が、かつてない攻めを見せたんではなかろうか。
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