シュウ成り代わり
ルキ視点


俺は一体どうしたというのだ。初めて逆巻の長女を見た時に、なぜか随分昔に止まったはずの心臓がドクリと音を立てた。


「おーい、ルキくん」

艶のある金糸の髪に気だるげな碧色の瞳 。整った容姿に、すらりとのびる肢体。綺麗なのはあの方の娘なのだからそれは当たり前だろう。しかし、この気持ちはなんだ? 胸のあたりがこう、もやもやとする感覚。

「ルキくんてばっ!」

この間ユーマと逆巻の長女が話をしているのを見た時はなぜか腹が立った。
二人が何を話しているのかが気になって仕方がなかった。

「ちょっと!? 聞いてる?」

「? コウか。……何か用でも?」

コウが呼んでいることに気がついてハッとする。どうして敵である逆巻の長女のことを考えていたのだろう。

「何か用って、ルキくんが呼んだんでしょ〜。……俺も色々あるんだから考えてよ」
「そうだったか? ……ああ、すまない。忘れた」

「忘れた!? し、しかもルキくんが謝ったっ!? あのルキくんが?」

「お前は俺を何だと思っている」

コウの驚き様にムッとなりそう言うと、こちらに向かって歩いてくる足音が聞こえてきた。そう言えばここは学校の廊下だった。


「ちょっと、……何でついてくるわけ?」

「はぁっ!? それはテメーだろうが」

「うるさい、声デカすぎ」

「ユリアさん、それにユーマくん、ここ廊下です」

逆巻の長女が家畜の手を引いて歩いてる横にユーマが歩いていた。
突然わけの分からない感情が俺の心に渦巻いた。これは分かる。ユーマと会話をしていたあの時同じ腹が立つ感じ。いわゆる嫉妬だ。


「何をしている、ユーマ」

「あ? ルキかよ」

「はぁ……、めんどい。待ち伏せとか」

彼女は気だるげな目を閉じて心底面倒くさそうにそう呟いた。家畜は俺と彼女を見比べておろおろしていた。まるで怯えるような姿は滑稽だが、それよりも彼女の姿に見とれてしまう自分のほうが滑稽だった。


「ルキくん?」

コウとユーマは俺の様子を見て不振がる。
「ルキ?」

「ふ、……はは」

多分これは、

「何、アンタ。……気でも狂(ふ)れた?」
俺はきっと彼女に惚れたのだ。込み上げてくる自嘲に呆れて笑っていると彼女が碧色の瞳を開いて俺を見た。

「そうかもな」





(……気持ち悪い)
(だ、駄目ですよユリアさんっ)
(いや、流石にねぇわ今の)
(いくらルキくんがおかしくなったからって二人とも酷いんじゃない? ね、ルキくん)
(……)
(……ルキくん? あ、あれ? ルキくんが固まってる!?)

(((そんなにショックだったの/か!?)))
(ふぁ、眠い……)


裏話
多分ルキは「好きだ」ということを認めないというか認めたくないから「惚れた」ということにしたのだと僕なりに自己解釈。
成り代わり主はユイちゃんがお気に入りで授業そっちのけでユイちゃんを抱き枕にする。ルキはそれが嫌でユイちゃんを誘拐してみたら成り代わり主が不眠症になったことを知り、仕方なくユイちゃんを返したけど誘拐する前以上に成り代わり主がユイちゃんにべったりになってさらに嫉妬してればいい。
ユーマとはただ会話してるだけ。というかユーマがちょっかいをかけに行くから仕方なく、仕方なく(ここ大事)相手してる。 ツンデレだから。


これは片思い……なのだろうか。





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