Please don't cry any more.
・リヒター成り代わり続編
※視点が混ざります。
※夢主は若干壊れてます。
※死ネタルート
sideB
僕のお母様が目を覚ました。
それは、僕が不甲斐なさに涙している時だった。泣いていたらお母様の頬に僕の涙が落ちてしまって、慌てて拭おうとしたらパチリと開いた瞼から、僕と同じ色の瞳が覗いたんだ。
side???
どうして泣いているのでしょう。貴方は滅多に泣いたり、ましてや本当の気持ちをさらすなんてことはしないのに。貴方は小さい頃からそうだった。
私を『愛している』というのに、どうして貴方はそんな悲しい顔をするのでしょう。私がこんなに『アイシテいる』のに、どうして貴方は後悔ばかりするのですか。
貴方の愛は偽りだったのですか。
sideB
お母様は僕の頬を触った。初めてだった。お母様が僕に自分から触れるなんて。僕はその時、嬉しかった。でも、お母様の次の言葉で裏切られた気になった。
「どうして泣いているの? 兄上」
僕はあいつなんかじゃない。あいつに似ていることがこんなにも恨めしいなんて。 お母様はもう、僕のお母様なんかじゃない。いいや、最初から僕のなんかじゃなかった。僕のお母様はあいつに壊されたんだ。でなければ、今、目の前にいる女性(ひと)がそんなに愛おしそうに微笑みながらあいつのことを呼ぶわけがない。
僕のお母様はもうどこにもいなかった。
side???
目が覚めると貴方がいた。涙を浮かべた貴方は私が「兄上」と言った途端に顔を青ざめてしまった。
どうして?
貴方はゆっくりと私からだんだん離れて行って、部屋から消えた。銀色に光る何かを落として。
私を『愛して』いたのにどうして?
sideK
『目を覚ました』
そう、あの子が言った。
自分の部屋にいるか、あの部屋にしか行かないあの子が私の部屋にやって来て、初めて私に口を聞いた言葉がそれだった。いや、それきりだった。あの子はそれだけ言うと部屋に帰ってしまった。
『目を覚ました』人物が誰なのかはすぐに察しがついた。
私が愛して、私が壊してしまった彼女。
最初は純粋だった。彼女の笑う顔や優しさが好きだった。
いつから歪んでしまったのだろう。最愛の妹を監禁し、あまつさえ子供まで身籠らせた。
誰かのものになるくらいなら私のものにしてしまえ、とあの時は必死だった。
気づけば彼女は人形のようになって、綺麗だった深紅の瞳は光を無くし、彼女の心は消えてしまった。
『目を覚ました』彼女のいる部屋へ行くと、彼女は――
side???
私は貴方を『アイシテ』いた。
けれど貴方は私を置いていった。
貴方は私を『愛して』いた。
けれど私は貴方に置いていかれた。
苦しい。
こんなにも貴方を思っているのに。
もう貴方は私を『愛して』くれないのでしょうか。
それなら、私は……
目に入ったのは、銀色に光るナイフ。
「ああ、そうでした。私は、貴方を『愛して』なんかいなかった」
偽っていたのは私だった。
sideK
「っ!? ユリアっ」
白で統一していたはずの部屋に赤が混じっている。
倒れている彼女に急いで駆け寄った。
彼女の胸に深く入った銀色のナイフを見つけた。
「そ、んな……。ユリア、目を開けて」
嘘だ。
「ユリア」
嘘だ。
「……私は、なんて」
「……兄、上……?」
ユリアがうっすらと目を開けてこちらを見上げている。
「!? ユリア。今、傷を」
「……ごめんなさい、……わ、たし」
止めてくれ。謝るのは私の方で、お前は何も悪くないんだよ。
「泣、か……ないで……にいさま」
『泣かないで、兄さま』
「ユリア……?」
幼い頃のユリアと今のユリアが重なって見えた。
sideユリア
あれほど嫌いだったのに、私はあのひとを愛そうとしている。私はそれが怖かった。だから逃げて拒んで眠りについた。苦しくて、辛くて。誰かに助けて欲しかった。 眠りについても、どうしてかあのひとの声だけは聞こえていた。
『すまない、ユリア』
あのひとは、私にそう言った。
泣きそうな声を聞いた時、幼い頃を思い出した。あの時のあのひとが目の前にいる。ああ、待って。私がそっちに行くから。だから、もう。
「泣かないで」
@@後書き@@
・長くてごめんなさい。
・死ネタでごめんなさい。
・成り代わり主の気持ちが変化しすぎてて誰こいつ状態になりました。
・というか似非カールハインツすぎですね(^^;)
・息子くんが……。ごめんなさい。
・あくまで死ネタルートです。というかこれ以外を書ける気がしない。
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